2015年09月29日(火) |
代理人は少々みっともない |
日経(H27.9.29)夕刊で、東京・歌舞伎町のキャバクラ店を利用した男性客3人が、店側から未払いの飲食代金約57万円を請求された訴訟で、東京地裁は「事前に料金の説明があったとは認められない」として、約5万円の支払いのみを命じた一審・東京簡裁の判断を支持し、店側の控訴を棄却したという記事が載っていた。
店側は、「席料が1人8万円、40%のサービス料などがかかると説明した」と主張し、説明をしているところの録音を証拠として提出した。
しかし、説明をする際に録音すること自体が不自然である。
裁判所も、「録音マイクに向かって一方的に話しただけのように聞こえる。音楽が大音量で流れる店内で説明したとは認められない」とした。
妥当な判断と思う。
それにしても、マイクに向かって一方的に話をし、それを録音して、あたかも客に説明をしたかのようにすること自体が悪質といえるし、店側に就いた弁護士は、少々みっともないと思う。
2015年09月28日(月) |
東京五輪 エンブレム使用中止によるスポンサー企業の損害 |
日経(H27.9.28)法務面で、取り下げが決まった東京五輪エンブレムで、スポンサー企業には差し替えに伴う事務負担や費用が発生しているが、スポンサー企業側の対応についての記事が載っていた。
記事では、スポンサー企業は訴訟で解決する可能性は低いのではないかとしており、私もそうであろうと思う。
スポンサー企業が、エンブレムを使用できなくなったことによる損害賠償まで請求することは難しい。
それゆえ、エンブレムの差し替えたことによる費用が請求の対象となるが、それほど多額の損害になるとは思われない。
そのため話し合いによる解決が穏当ということにはなる。
ただ、話し合いとはいえ、スポンサー企業に損害が生じているのは事実なのであるから、大会組織委員会としては一定程度の損害金は負担すべきであろうと思う。
2015年09月25日(金) |
成年後見人を対象とした保険 |
日経(H27.9.25)経済面で、認知症の人が事故で損害を与えた場合に賠償金を後見人に支払う新型の損害保険が登場するという記事が載っていた。
認知症の人が他人に損害を与えた場合、本人の賠償責任は問えないが、監督責任のある後見人は損害賠償を負う可能性がある。
弁護士が後見人の場合は、賠償保険に入っているのでそれで対応できるが、親族が後見人の場合には、保険に入っているとは限らず、思いがけない責任を負う可能性がある。
それゆえ、記事のような保険は非常に意味がある。
金額も、年間の保険料が1000〜2000円程度とのことなので、後見人の負担にはならないであろう。
2015年09月18日(金) |
仲間を琵琶湖に突き落とす |
日経(H27.9.18)夕刊で、今年7月、遊び仲間の定時制高校生を琵琶湖に突き落として溺死させたとして、少年3人を傷害致死の疑いで逮捕したという記事が載っていた。
仲間の一人を脅して海や湖に飛び込ませるということは、しばしば看取られる非行パターンである。
司法修習生のころ、そのような事件を扱ったことがあるし、少し前に扱った少年事件でもあった。
実際に事件になっていないケースも多いのではないだろうか。
しかし、これは一歩間違えば死に至る非常に危険な行為であり、絶対に慎むべきである。
日経(H27.9.17)社会面で、川崎市の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で入所者3人が相次いで転落死した問題で、川崎市が施設に立ち入って監査し、施設側から運営や管理について聴き取ったという記事が載っていた。
しかし、川崎市の対応は完全に遅い。
昨年12月には、別の入所者に職員が暴行を働く動画が撮られ、それを川崎市に伝えられていたというのである。
たとえ一部の職員であっても、入所者に職員が暴行を働くような施設では、施設全体がそれを容認する雰囲気があったと言わざるを得ない。
それゆえ、入所者への虐待があった場合、個々の職員の資質の問題ではなく、施設全体の問題と考えるべきである。
後見人や後見監督人に選任されているので介護施設に赴くことは多く、それだけに分かるのであるが、介護業務は本当に大変である思う。
ただ、ほとんどの介護職員はまじめに介護業務を行っている。
それだけに、入所者への虐待が指摘される施設は、個々の職員の問題ではなく、施設自体の問題であると考えるべきであり、行政は早い段階で是正措置を講じる必要がある。
それが遅れたところに、今回の事件の問題があると思う。
2015年09月15日(火) |
辺野古埋め立て承認の取り消し |
日経(H27.9.15)1面で、翁長沖縄県知事は、仲井真弘多知事時代に出した辺野古埋め立て承認を取り消す方針と報じていた。
これに対し、政府は、県の承認取り消しの効力を停止して埋め立て工事を続行するようであり、いずれ裁判になる可能性がある。
その場合に、裁判所は、埋め立て自体の適否については判断をせず、訴えの資格があるかどうかという点と、埋め立て承認をした手続きに瑕疵があるかどうかという点を中心に判断と思われる。
そうなると、沖縄県知事は承認手続きに瑕疵があったと主張しているものの、承認が無効になるほど手続きに瑕疵があるということはあまり考えられない。
それゆえ、裁判所は「埋め立て承認は無効ではない」と判断するのではないかと思われる。
2015年09月10日(木) |
被告が任意に提出した手紙でも秘密交通圏の侵害になる |
日経(H27.9.10)夕刊で、千葉地裁は、検察官が勾留中の被告に対し、弁護士に送る予定だった手紙などを提出させたのは「秘密交通権」の侵害だとして、国に計44万円の支払いを命じたという記事が載っていた。
判決理由では、「検察官は弁護士宛ての手紙と予想できたのに、漫然と提出させた。落ち度は重大」「被告の同意はあったが社会通念上相当と認められず違法だ」と述べている。
被告が任意で弁護士宛の手紙を提出したのであるから、違法性はないようにも思われる。
しかし、秘密交通権は、被告の権利であると共に、弁護人の固有の権利であり、弁護士に送る予定の手紙を提出させることは、弁護人の固有の秘密交通権を侵害すると考えたものと思われる。
このような論理構成は、鹿児島の志布志事件接見国賠訴訟の鹿児島地裁判決においてみることができる。
2015年09月09日(水) |
マジックミラー越しに見る店舗は「興行場」 |
日経(H27.9.9)夕刊で、制服や水着姿の女性をマジックミラー越しに見せる店舗を無許可で営業したとして、警視庁は、店舗経営者を興行場法違反(無許可営業)の疑いで逮捕したという記事が載っていた。
マジックミラー越しに見せる店舗を「興行場」というのは何となく違和感はある。
ただ、興業場法では、「興行場」を「映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸又は観せ物を、公衆に見せ、又は聞かせる施設をいう」と定義している。
マジックミラー越しに女性を見せる店舗は、「観せ物を公衆に見せる施設」といえるであろうから、警察の捜査に問題はない。
ちなみに、過去には、個室ビデオ店が「興行場」と認定されたことがある。
2015年09月08日(火) |
司法試験で考査委員が問題を漏えい |
日経(H27.9.8)夕刊で、今年の司法試験で問題の作成などに関わった明治大法科大学院の青柳教授が、教え子の受験生に問題の内容を漏らしていたという記事が載っていた。
とんでもない事件である。 教えられた方も、仮にそれで合格して、裁判官、検察官、弁護士になっていたとすれば、恐ろしいことである。
そもそも、受験生と日常的に接触する法科大学院教授が考査委員をしていることに問題があると思う。
問題の漏えいには至らないにしても、日常的な指導の中で、考査委員だからできる指導があるのではないかいう疑念は付きまとう。
また、問題の漏えいではないが、司法試験ではその考査委員の得意な分野が出題されるということはよく言われる。
それゆえ、受験生は考査委員の書いた法律書を買わざるを得ず、その書籍はよく売れることは事実である。
そのような、もやもやとした関係を考えると、考査委員はすべて、法科大学院に関わりのない裁判官、検事、弁護士などの実務家にすべきではないだろうか。
2015年09月07日(月) |
暴力団組長の使用者責任 |
日経(H27.9.7)社会面で、暴力団山口組から離脱した傘下の2次団体が新組織を結成したと報じていた。
この問題では、マスコミは、30年前に山口組が分裂して起こった山一抗争の再現となるのではないかと盛んに報じている。
山一抗争では死者が30人近くに達し、一般市民も巻き添えで負傷している。
しかし、このような激しい抗争は起きないのではないだろうか。
というのは、最高裁が、暴力団の抗争事件において組長の使用者責任を認める判決を出しており、それが暴力団に大きな打撃を与えているからである。
もっとも、この最高裁判決は当該事例について判断したものではある。ただ、その判断の仕方からするとほとんどの暴力団の抗争に該当するであろう。
だかといって、抗争によって一般市民が巻き添えを受ける可能性を放置してよいわけがなく、警戒は絶対に必要であるが。
2015年09月04日(金) |
元最高裁長官が集団的自衛権について語る |
日経(H27.9.4)4面で、元最高裁長官の山口繁氏が、安全保障関連法案について「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反」と述べたという記事が載っていた。
元最高裁長官が、このような発言をするのは珍しい。
また、政府、与党が、砂川判決が「必要な自衛の措置」を認めていることを根拠に、集団的自衛権の行使容認を導き出したことについて、山口氏は「集団的自衛権を意識して判決が書かれたとは到底考えられない。憲法で集団的自衛権、個別的自衛権の行使が認められるかを判断する必要もなかった」と語ったとのことである。
その通りだと思う。
集団的自衛権の行使については合憲論もあり得ると思うが、砂川判決の評価については、山口氏の見解に異論の余地はないのではないだろうか。
2015年09月03日(木) |
自民党 成人年齢を速やかに20歳から18歳に引き下げる |
日経(H27.9.3)4面で、自民党の特命委員会は、民法の成人年齢は「できる限り速やかに20歳から18歳に引き下げる」こととしたという記事が載っていた。
ただ、飲酒・喫煙の禁止年齢については、当初の案では「18歳未満への引き下げが妥当」としていたが、反対意見が相次ぎ、結論を先送りしたとのことである。
確かに、飲酒・喫煙については、反対する考えも理解できる。
しかし、選挙権が18歳に引き下げられたのであるから、他の事項についても18歳からは大人として扱うのが整合的であろう。
したがって、基本的には成人年齢を18歳に引き下げた上で、どうしても引下げに問題がある場合だけ例外を認めるという形が望ましいのではないだろうか。
2015年09月02日(水) |
電話での接見の利用が低調 |
日経(H27.9.2)夕刊で、離島や遠隔地に留置された被疑者などに、弁護士が電話で連絡する電話接見制度の利用が低調であるという記事が載っていた。
低調な理由は、通話が15分以内、前日の申込みなどの制限があることが大きいようである。
ただ、それ以外の理由として、電話という通信手段に問題があるのではないかと思う。
本来は、弁護士は直接被疑者に会うべきであるから、せめて顔を見ないと互いの信頼関係が生まれない。
それが電話では、弁護士としては積極的に利用しようとは思わないのではないだろうか。
それゆえ、スカイプを利用するなど、もう少し通信方法を工夫した方がいいのではないかと思う。
2015年09月01日(火) |
東芝が決算発表を延期 |
日経(H27.9.1)1面で、東芝は、8月31に予定していた2015年3月期決算発表と有価証券報告書の提出を再び延期したと報じていた。
米国子会社での不適切な会計処理など、改めて調査が必要な案件が判明したためとのことである。
しかし今頃になって、「調査に必要な案件が判明」するのだろうか。
東芝の会計処理問題では、東芝や調査した第三者委員会だけでなく、日経など一部マスコミまでが「不適切会計」と表現している。
しかし、実態は「不正会計」であり「粉飾決算」であろう。
その点をあいまいにしたままのため膿を出し切れていないことが根本原因ではないだろうか。
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