今日の日経を題材に法律問題をコメント

2006年03月31日(金) 村岡元官房長官に無罪判決 検察庁は控訴できるのだろうか

 日経(H18.3.31)1面で、ヤミ金献金事件で、東京地裁は、村岡元官房長官に対し無罪を言い渡したと報じていた。

 これに対し、東京地検は直ちに控訴の方針を示したとのことである。


 検察庁が直ちに控訴の方針を示すというのは異例である。

 
 というのは、検察庁は各検察官が独立しているわけではなく、組織で運営されているから、控訴するかどうかは検察庁内部の会議で決めるからである。


 しかし、村岡元官房長官が収支報告書に記載しないことを決めたというのは、元会計責任者の証言に基づいているのであるが、新聞報道を読む限りでは、その証言に添う証言は他になく、元会計責任者の証言も変遷しているようである。


 果たして、検察庁はこのような証拠関係の下で控訴できるのだろうか。



2006年03月30日(木) 過払い金の支払いで純利益が減少

 日経(H18.3.30)15面の株式投資欄で、消費者金融プロミスの純利益が、過払い金返還額が膨らむなどの理由から、48%減少する見込みと報じていた。


 過払い金返還は、消費者金融会社の屋台骨を揺さぶる状況になっているようである。


 東京地裁でも、ほとんどの法廷で少なくとも毎日一件は過払い金返還訴訟が行われていると思う。


 それぐらい返還請求が相次いでいる。


 プロミスのような大手はまだ大丈夫と思うが、中小クラスになると、担当者が、「そんなにいじめないで下さいよ。過払い金の返還でうちはつぶれてしまいます」と泣き言をいうところまである。


 確かに、会社や、その会社の投資家の立場からすると、いったん利益として計上したものが、後から取り返されるのでは堪らないだろう。


 ただ、そのすべての原因は、法律が認める利率が2種類あるためである。


 それゆえ、早期に金利を一本化すべきであると思う。



2006年03月29日(水) 会社法改正 せめて定款の変更を

 日経(H18.3.29)13面に、「カウントダウン 会社法 識者に聞く」というインタビュー記事が載っていた。


 会社法の施行日が近づき、会社法改正に関する記事はほぼ毎日載っている。

 弁護士会館地下の書店でも、会社法関係の書籍は山積みである。


 ただ、大手企業は別にして、中小企業の対応は鈍いようである。


 確かに、経過規定やみなし規定が設けられているため、直ちに会社法の施行に対応する必要性は少ないかもしれない。


 しかし、会社法制定は、自社の組織の見直しをはかるいい機会である。


 少なくとも、定款を、会社法の制度や用語にあわせた規定に変更することは検討した方がよいと思う。



2006年03月28日(火) 東京高裁は、松本被告の控訴を棄却

 日経(H18.3.28)1面で、東京高裁は、オウム事件の松本被告について、弁護団が控訴趣意書を提出しないことを理由として、控訴を棄却したと報じていた。


 弁護団は「許させない暴挙」と非難しているようである。


 しかし、控訴趣意書を提出しないことによって、松本被告の死刑をほぼ確定させたのは弁護団である。


 私は弁護過誤ではないかと思う。


 ただ、そうはいっても、これだけの重大事件である。

 しかも弁護団は3月28日までに控訴趣意書を提出すると言っていたのだから、東京高裁は、審理をすべきではなかったかと思う。



2006年03月27日(月) ルールを決めておくことが重要

 日経(H18.3.27)19面の『リーガル3分間ゼミ』というコラムで、「取引先からもらったチケットをネット競売で売ってもよいか」というQ&Aが載っていた。


 結論としては、「もらったチケットをネット競売で売ってもダフ屋行為とはいえない」「しかし、贈答品の受領を禁じる社内規則がある場合もあるので注意」ということであった。


 何だか細かいことを書いているなあという印象であるが、それはともかく、こういったことは事前にルールを定めておくことがトラブルを防止に役立つ。


 出張で貯めたマイレージは誰のものかということが時々話題になるが、それも事前にルールで決めておけばよいのであって、難しく考える必要はない。



2006年03月24日(金) 起訴猶予は、無罪ではない

 日経(H18.3.24)社会面に、タレントのボビー・オレゴン氏が暴行容疑で書類送検された件で、東京地検は、起訴猶予処分にしたと報じていた。


 起訴猶予処分とは、無罪放免ではない。


 被疑事実は明白であるが、犯罪の軽重、情状などを考慮して、起訴しないというものである。


 この事件では、暴行という比較的軽微な犯罪であり、しかも被害者と和解が成立しているようであるから、起訴猶予処分は当然であろう。



2006年03月23日(木) 産婦人科医師逮捕で波紋

 日経(H18.3.23)社会面トップに、帝王切開手術で癒着胎盤をはがす際に大量出血を起し死亡させたうえ、警察に届け出なかったとして、医師が逮捕、起訴された事件で波紋が広がっているという記事が載っていた。


 癒着胎盤をはがす治療はかなり難しく、過失があったかかどうかは微妙な事案のようである。

 それなのに逮捕までされるとなると、この病院のように1人で勤務する医師は怖くて手術できないことになると医師会側は批判している。


 また、届出義務についても、医師法では遺体に異常がある場合には届け出ることになっているが、医師会側は、医師が専門的立場から異常なしと判断して届け出なかったのであるから、それを尊重すべきであり、逮捕は行き過ぎであると批判している。


 この問題は、私の友人の医師も、「こんなことで逮捕されるなら、1人で勤務する病院に医師を派遣できない。すべて引き上げることになってしまう。」と怒っていた。


 私としては、事案の詳細が分からないので判断できる立場にはない。


 ただ、一般論として、警察というのは、捜査に必要があれば他の事情はあまり考慮しないところがある。


 このケースでも、証拠隠滅の恐れがあると判断したから逮捕しただけであろう。


 それによって今後の治療行為が萎縮してしまうということはあまり考えない。


 良い点でもあり、悪い点でもある。



2006年03月22日(水) 筋弛緩剤点滴事件の控訴審判決で弁護人が退廷

 日経(H18.3.22)ネットニュースで、筋弛緩剤点滴事件の控訴審判決で、仙台高裁は、一審判決を支持し、被告人の控訴を棄却したと報じていた。


 判決の言い渡し中には、執拗に弁論の再開を迫った弁護人4人が退廷させられたそうである。


 刑事事件では(民事事件でも同じであるが)、被告人との信頼関係を失うと適切な弁護活動はできない。


 その意味で、被告人の立場に立って、「執拗に弁論再開を迫る」ということは理解できる。


 ただ、徹底的に抗議して退廷させられるというのは、威勢はいいが、被告人に有利になるわけではない。


 その意味では、私のスタイルではないなあという思いはある。



2006年03月20日(月) 強風でトタン板が飛び、けが

 日経(H18.3.20)社会面で、昨日の強風でトタン板が飛び、男性が軽傷を負ったと報じていた。


 以前、同じような事案で、駐車場のフェンスに広告看板を出していたところ、広告看板が風で飛んで人に当たり、怪我をした人が、広告主に賠償を求めたということで相談を受けたことがある。


 この場合、誰が責任を負うのであろうか。


 看板の取り付け方が悪いなど、工事の仕方に問題があれば、工事業者が責任を負うことは間違いない。


 また、民法には、土地の工作物に瑕疵があって、他人に損害を与えた場合には、工作物の占有者または所有者が責任を負うという規定がある。


 そうすると、広告看板の占有者や所有者は責任を負う可能性があるが、広告主は、広告看板の占有者でも所有者でもない。


 そうすると、相談を受けた事案では、広告主は責任を負わなくてよさそうである。


 ただ、怪我が軽傷で、治療費もたいしたことなかったので、「治療費ぐらい出したらどうか」とアドバイスした。


 責任がないのであればお金を払う必要はないという考え方も当然ある。


 それゆえ、私のアドバイスが適切だったかどうかは分からない。



2006年03月17日(金) ライブドア事件 一部の被告に保釈決定

 日経(H18.3.17)社会面で、ライブドア事件の堀江被告らの保釈決定について報じていた。


 記事によれば、東京地裁の決定は次のとおりである。

 岡本被告 保釈
 宮内被告 保釈 東京地検が準抗告
 中村被告 保釈 東京地検が準抗告
 堀江被告 保釈却下
 熊谷被告 保釈却下


 堀江被告は公訴事実を認めていないから、保釈却下というのは一応理解できるが、熊谷被告は事実を認めていると報道されているのに、なぜ保釈却下なのかよく分からない。


 ただ、東京地裁が3人の保釈を認めたことから、5人についてはもう追起訴はないように思われる。



2006年03月16日(木) 最高裁弁論に欠席

 日経(H18.3.16)社会面に、光市の母子殺人事件の最高裁弁論に出廷しなかった弁護士に対し、遺族が懲戒請求を求めたと報じていた。


 この弁護士がどいう考えで欠席したのか知らないが、推測すると、このような悲惨な犯罪では、被告人の内面を引き出して、犯行の動機を明らかにすることこそが重要であり、そのためには被告人との信頼関係を築く必要があるが、その時間が足りないということだと思う。


 この弁護士の書いた本を読んだことがあるが、被告人の利益を徹底的に考える立場のようである。

 死刑判決が出ても、戸籍を移し、判決に記載している本籍の誤りを指摘して判決訂正までの時間稼ぎをするということまでやっていて、びっくりした。


 私としては、弁論を欠席することは問題であり、非難されるべきであると思う。


 ただ、被告人の利益を徹底的に考え、それを貫くという弁護活動のやり方については参考にすべき点はある。



2006年03月15日(水) 法律の不知は許されない

 日経(H18.3.15)1面に、ライブドアの堀江被告の追起訴を報じていたが、堀江被告は、「すべての業務は専門家に相談してきたので合法だと思っていた」と述べて事件を否認しているそうである。


 「専門家が大丈夫といったので違法ではないと思った」というのは、講学上「違法性の錯誤」といわれており、大変な議論があるが、判例は、違法性の錯誤は故意を阻却しないと解している。


 「法律の不知は許されない」ということである。


 したがって、「専門家に相談していたから合法だと思っていた」という堀江被告の主張は通らないだろう。



2006年03月13日(月) 会社内の出来事をどこまで書ける?

 日経(H18.3.13)16面の「リーガル3分間ゼミ」に、「社員がブログで仕事のグチや職場での出来事を書き込むことはどこまでゆるされるのか」ということを書いていた。


 記事では、内部告発であれば、内容の真実性、目的、手段の妥当性などが問題になるとか、企業秘密の公表は禁じられるなどと書いていた。


 しかし、これは冒頭の設問と解説がずれているようである。

 これは、冒頭の設問に対する的確な解答が難しかったからであろう。


 そこで、改めて「社員がブログで仕事のグチや職場での出来事を書き込むことはどこまでゆるされるのか」ということを考えてみる。


 会社内での些細な日常を書かれて、会社の上司や職場の同僚の中にはおもしろく思わない人がいるかもしれない。


 しかし、言論の自由は保障されているから、会社内のことを一切書いてはダメと言うことはできないだろう。


 結局、書いた内容が、書かれた側にとって受忍限度を超える言論か否かというあいまいな基準よらざるを得ないかもしれない。


 ただ、職場内での出来事を書いた程度では、それが虚偽でない限り、相当程度許されるように思う。



2006年03月10日(金) 警察官が、「ウィニーは有用」

 日経(H18.3.10)社会面に、ファイル交換ソフト「ウィニー」を通じてウィルスに感染してしまい、警察の捜査資料の流出が相次いでいる事態について、警察庁長官が「摘発の対象となったソフトをインストールするのは信じられない」と嘆いているという記事が載っていた。


 そのすぐ下の記事では、捜査資料を流出させた警部が、「仕事にウィニーが有用と思った」と話していると報じていた。


 現在、ウィニーの開発者は著作権法違反のほう助の罪に問われて公判中である。

 
 それなのに、警察官が「ソフトが有用と思った」というのは皮肉である。


 私は、ソフト開発者に著作権法違反のほう助罪は成立しないと考えている。

 しかし、これだけウィニー自体が悪者扱いされると、それに影響されて、裁判所は有罪の判断をするかもしれない。



2006年03月09日(木) 痴漢で、逆転無罪

 日経(H18.3.9)社会面に、痴漢で逮捕された男性に対し、東京高裁が逆転無罪を言い渡したと報じていた。


 逮捕されてから2年5か月も経過している。


 この間、この男性は大変な思いをしたと思う。


 今後も、再就職ができるかどうかも分からないし、「本当はやっていたんじゃないか」という目で見る人もいるだろう。


 同情を禁じえない。



2006年03月08日(水) 返済した額全額が損害と認定

 日経(H18.3.8)社会面に、年約1200%もの高利で貸し付けた業者に対し、最高裁は業者側の上告を退ける決定をしたと報じていた。


 訴えていた男性は、58万円借りて、108万円を返したところ、返済した108万円全額が損害である認められたわけである。


 返した額と、借りた額との差額である50万円が損害であるという考えもあり得る。


 しかし、最高裁は、返済した金額の全額である108万円を損害と認めた高裁判決を支持したわけであり、その意義は大きい。



2006年03月07日(火) どこかで本当のことが言えなかったのだろうか

 日経(H18.3.7)社会面に、弁護士が、訴訟提起を怠っていたのに、依頼者に「勝訴した」とうそをいい、判決文まで偽造したという記事が載っていた。


 この弁護士は、依頼者に、相手方から回収したとして200万円まで支払っていたそうである。


 業務停止は2年と重い。


 どこかの段階で本当のことを言えば、ここまでならなかったのにと思うのだが・・。



2006年03月06日(月) 組織犯罪法の適用には違和感を覚える

 日経(H18.3.6)社会面に、「名義貸し」による弁護士法違反で起訴された西村衆議院議員が「一部の起訴事実を否認する方針」と報じていた。


 否認するのは組織犯罪処罰法違反に該当する事実のようである。


 ただ、検察官は立証に自信を持っているそうであり、私も、記事を読む限り、西村議員の言い分は通らないと思う。


 しかし、組織犯罪処罰法は、その名前の通り、組織犯罪を想定したものである。


 それなのに、西村議員のような組織犯罪とはいえないケースにこの法律を適用するのは違和感を覚える。



2006年03月03日(金) 騙す側も、騙される側も同じ

 日経(H18.3.3)社会面トップで、未公開株を、「近く上場する」とうそをいい、株を売却した投資会社幹部が逮捕されたと報じていた。


 未公開株を巡る詐欺事件は最近急増しており、昨日も同じような相談を受けた。


 外国為替証拠金取引の規制が厳しくなったことから、そこにいた業者が未公開株取引に流れ込んだようである。


 そして、外国為替証拠金取引では、狙われたのは高齢者の人たちであった。


 つまり、だますための道具が外国為替証拠金から未公開株に代わっただけであり、騙す側も、騙される側も同じという構造である。



2006年03月02日(木) 刑事事件で言い訳すると、裁判官は不機嫌な顔になる

 日経(H18.3.2)2面で、送金メール問題で国会質問した永田議員の謝罪の仕方がいい訳染みていて不十分であるとして、反発が強まっていると報じていた。


 政治家がどのような謝罪の仕方をするのかは政治問題であるから、永田議員の謝罪の仕方がいいかどうかの評価は控える。


 ただ、これが刑事裁判であれば、あの程度の謝罪だと、裁判官からは反省していないと思われるだろう。


 被告人が犯罪を認めたとしても、犯罪の動機について言い訳がましいことを言うと、裁判官は途端に不機嫌な顔になる。


 そのため、私は、「犯罪を認めるのであれば、一切言い訳せず、『済みませんでした、反省しています』と言いなさい」とアドバイスしている。


 その方が裁判官の心証はいいからである。


 ところが、そのようにアドバイスしても、学歴があり、プライドの高い人は、言い訳をしようとする傾向がある。


 永田議員も学歴が高いようだから、全面的に非を認めて、「ごめんなさい」ということができなかったのだろうか。



2006年03月01日(水) 接見妨害に損害賠償

 日経(H18.3.1社会面で、東京高裁が、千葉県警松戸東署での接見妨害を認め、損害賠償を認めたという記事が載っていた。


 かつては、警察や検察官の接見妨害に対する訴訟が頻発した。


 検察庁もムキになって争ったこともあった(「ムキになった」というのは検察官が言っていたことである)。


 しかし、いくつかの最高裁判例が出され、最近では、接見妨害と思われることもほとんどなくなった。

 接見に行くと、警察でも非常にスムーズに対応してくれている。


 その意味では、接見妨害の訴訟というのは最近では珍しい気がする。


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