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2005年01月23日(日) ■ |
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彼と俺たちの一番最悪な結末。 |
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さてと
昔々あるところに「幸平」という若い大工がおりました。 棟梁は「奥さん」。平屋建て専門の棟梁です。 昔は「いかした親父」って賞まで貰った「ナイスガイ」です。 棟梁も国をまたに駆けて活躍した腕の良い職人でした。職人の先駆者です。昔の話ですけど。
幸平は二階建ての大工になりたくて仕方ありませんでした。 幸平は棟梁に言いました。 「棟梁うちも二階建て造りましょうよ」 棟梁は 「おお、来年な。それまで修行しろ」 「でも、棟梁来年来年って毎年言ってるじゃないですか。それにいきなり二階建ては無理ですから、そのための練習場だって必要なんじゃないですか」 幸平がこう言うと 「生意気言ってんじゃゆーよ。俺たちだってなー、旦那衆見つけるの並みの苦労じゃねーんだよ」 と、取り合ってくれません。
幸平は職人仲間から他の二階建ての棟梁が幸平を欲しがってると聞いていました。鳶の経験がある幸平は二階建ての大工にはもってこいです。 幸平は思いました。 「親方がああじゃ俺は何時まで経っても平屋の職人で終わっちまう。俺はなんとしても二階建ての職人になりてえ。恩ある棟梁だけど俺は『じぇい弐横浜組』が二階建てをやらないなら、他の棟梁の下で修行してえ」
幸平は棟梁に言いました。 「棟梁。今までのご恩は大変ありがたいんですが、俺はどうしても二階建ての大工になりたいんです。どうか他の組を紹介して下さい」 「そうか、どうしても二階建てがやりたいんか。でもな幸の字。世間は甘くねえぞ。もうちょっと話しあおうや」 「はい。判りやした」 幸平は何回か親方や職人を引退した「じんさん」、調子の良い使いっぱしりの「辻公」、道具運びの「ソエちゃん」と話ました。 みんなに慰留されて幸平は迷いました。 でも、そうこうしているうちに他の二階建ての棟梁は着々と来年の職人の補強をしていました。 幸平が気がついた時には彼の居場所が無くなっていました。
幸平が他の組に行けない様に棟梁が意地悪したのか、それとも幸平の決断が遅かったのか、他の二階建ての棟梁がほんとは幸平が欲しくなかったのかはもう判りません。 でも彼には居場所がなくなりました。 その時、遠い雪深く何も娯楽もなくずーずー弁の「山形組」から連絡が入りました。平屋建ての組でした。でも、元々ご公儀の作った組で今年二階建ての申請が認められなかった組です。ともに二階建てを目標としているライバル組です。 「じづはおらたづもこまっちまってなや。よがったら星のあどがまにこっちきたぐんねがい」 何言ってるか幸平には判りません。でも、幸平は僻地に行く決意をしました。
幸平は棟梁や、組の仲間、そして応援してくれた長屋のみんなに言いました。 「俺の本意じゃないけど、山形組に行きます。ともに二階建てを目指す組なんですけど、俺だけは特別扱いして贔屓にして下さい。俺は横浜組の近くの現場に来た時は、梯子乗りとかやりますんで応援して下さい」
これを聞いた長屋のみんなは理解できませんでした。誰も応援はできないと思いました。
この話は童話ですから。 実在の人物には関係ないですから。
ブーイングだけはしますけどね、人生最大の。
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