2005年02月13日(日) |
『寒い夜だから』(ヨコヒナ) |
深夜まで続いたラジオも終り、マネージャーが待っているであろう車までの道のり。 一番冷え込むであろう時間に、外の空気に触れ。いつも大騒ぎしている横山以上に、騒ぐ人影があった。
「さっむいわー寒い!!」
ダウンをぎゅっと掴んで。叫んでいるのは村上。 いつもなら、寒さも熱さも感じないと、文句も出ずにいるのに。 今日に限っては違って。横山相手にぶーぶと文句を言う姿は。昔の村上を思い出させるようで。 嬉しいと思うのと同時に、昔の乗りが戻ってきた横山は。
「あっためてやろうか?」 「ホンマ?」 真っ赤になって否定するだろうと思ったのに、こうていされてしまい。横山はがっかりと肩を落とす。
「おまえは冗談が通じへんからいややわ・・」 「なん、冗談やったん?」 「当たり前や!あっためたるなんて、本気で言うてたらきしょいわ!」
男同志で抱き合ってあっためあったら、恐いだけやないか。 なんて、うだうだと叫ぶ横山に、村上は段々腹が立ってきた。 恐いとかきしょいとか。そんなん言われたら、これから先、なんもできひんわ。 ちょっとだけ、いちゃつきたいなと、思っただけなのに。 寒いからっていうのを理由にすれば、横山も安心して。ほんの少しだけ、くっつくの許してくれるかと思ったのに。 にべもなく否定されたら、いやがられたら。結構、傷ついた。
「ほんなら、たっちょんでも呼ぼうかな?」 「大倉?」 「うん、あっためてくれー言うたら、あっためてくれそうやもん」
本気で呼ぼうなんてことは、もちろん思ってはいないけれど。 大きなカラダで、付き合いよくて。ワガママだろうとなんでも、うんと頷いてくれる大倉のことだから。 寒いから、抱きしめてといえば、何言わずに抱きしめてくれるだろうと、思った。 大倉のこと、好きになってたら、幸せやったんかもなぁ。
大きくため息をついて。横山の顔を真正面から見ようとして・・・ 自分以上に不機嫌な顔をしているのに気づいた。
「やから、オマエはいやや言うてんねん!」 「もー何がですかぁ?」 「冗談通じひんからいやや言うてるやん!」
まるで怒ってるかのような、横山の声。 なんで怒られるんか、さっぱりわからへんのやけど。
「冗談て、どこから?」
聞いたら、真っ赤な顔して、怒鳴られた。
「汲み取れや阿呆!」
真っ赤な顔をしてるのを見て。 汲み取れて言われても。今の会話と表情だけで無理やろ?なんて思うけど。それ以上答える気がないような。そっぽ向いたままの表情を見て。 ヨコがそーいう気なら。勝手に汲み取らせてもらいますわ。
最初の、言葉も冗談ではなかったと、思いこんで。 斜め前を歩く横山の腕に、からまって。ぎゅっと、あったまるかのように、くっついた。
怒られるやろなーなんて思いながら、横顔を覗きこむと。 そっぽ向いたまま、すたすたと歩く姿は。顔が真っ赤になってて。 だけど、振りほどこうとはしないから。 これで正解やったんやって、安心しながら。真っ赤な顔してるヨコがおかしくて、笑った。
「ヨコの愛は難しいわ」 「・・・・うっさい」 怒る声も照れているようで。 村上は、笑った。
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