2005年01月12日(水) |
『ラブラブSHOW5』(ヨコヒナ) |
ふいに、相手の気持ちを確認したくなるときって、あるやん? 別に疑ってるってわけやないけど。なんとなく、「好き」の言葉が聞きたくて。愛されてるって気持ちをもらいたくて。 それにはてっとり早く、「ヤキモチ」が有効な手段で。もっとも効率よい気持ちのバロメータ。 だから、ほんの少しだけ。イジワルして。みたりして。 仕事してても一緒におっても。絶対に視線あわせないようにして。ヨコのこと、みないようにして。会話も言葉だけ。 決して見ない。だけどほかの子には、いつものように、目を見て会話して。そんな、ちょっとした仕草だけど。ヨコが気づいてるのわかってるから。さっきから、なんか言いたげにしてるん、知ってる。いつもは感じない、ヨコからの視線、感じるから。 ジュース買ってくるという安田の言葉を聞いた途端。そばに、自分の隣に座ってきたヨコに、心のなかでガッツポーズをした。
「なんで・・・・おまえ・・・・しないん?」 「ん?なんですのん?」 何が言いたいのか、今、何を言ったのか。小声だけれど、わかっていた。聞こえていた。 やけど。あかんねん。 いっつも、こうやって、わかってしまうから。ヨコが言いたいこととか思ってること、わかって先回りして頷いてまうから。やからヨコは安心して、言葉にすることを止めてしまった。 おまえがわかってんなら、ええねんなんて。もっともな理由つけて。気持ちを言葉にしてくれなくなった。 もともと、言葉にするの苦手な人やから。しゃーないって、思う。やから、ヨコに関しては自分は、聡くなったんやし。言葉にしなくてもわかる空気ってのが、気持ち良かった。 ツーカーぽくて。わかりにくいヨコの感情を読みとって。かわりに伝えて。村上くんはすごいなんて、言われるのとか。実はごっつ気持ち良かったりして。
けど。ちゃうやん。 仕事ではツーカーで通るけど。 『恋人同志』やったら、それは成り立たないやん?
言葉くれきゃ、あかんやん。 ヨコが思ってるだろうって、思ったこと。口にしたら、妄想してるようなもんやん? やって、ほんまにヨコが思ってるかわからへんやん。恋愛感情なんて。自分のいいように思ってしまうんやから。 「目が合った」だけで恋人になった気持ちでいる人もおる世のなかで。目をみただけでわかるなんて。自分のこと、好きでいてくれてるなんて。わかった気でいられるわけない。 やから、明確な言葉を。たまにはくれたってええやん。 言葉にしてくれへんと、あかんこともあるやん? せめて、一ヶ月に一回くらいは、言葉にしてほしい思うわけですよ。 やから、もっと、イジワルしたろ思った。
けど。 あかんわ。 天才には、敵わない思ったのは、これで何度めだろうか?
「なんで、そこにおるのに、俺のこと見いひんねん!」 「え?」 「俺のこと、見てろやボケ!」
なんて怒鳴られてもうた。
「・・・すいません」 驚きのまま、とりあえず謝ると。ヨコは満足そうに頷いたあと。 次の仕事があるからと、楽屋から出ていった。
「見ろ言うたのに、いなくなってどうすんねん」
なんて矛盾してんやろ。満足して笑って出ていって。残された俺はどないしたらええねん。見てろって、ロケでもついてこいっていう意味? そういうことではないってことは、充分わかってたけど。 充分、わかりすぎるくらい、分かったけど。
「けど、結局好きやって言わせてへんわ・・・」
気持ちを言葉にしてもらうっていう、今回の目標が。まるで叶えてない。 結局、いつもの通り。ヨコの態度に、遠まわしな言葉の意味を理解しちゃって。割き回りするかのように、頷いてる自分。 あかんやん。
「村上くん、どないしたん」 ジュース買ってくるといったきりだった安田が、自分たちの分まで抱えたジュースをもって。ドアの前で苦悩している俺に、不思議そうな顔を浮かべていた。 イキナリ、ジタバタしている自分に対しての、言葉なのだというのはわかったが。素直に答えるのも癪で。 「あ?なにがや」 聞き返してやると、安田はジュースをテーブルにおいて。手を伸ばしてきた。 「顔、真っ赤やで」
頬に触れる安田の手が、冷たくて。気持ちよいって思うのは。 顔が火照ってるからだなんて、思いたくないけれど。
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