2004年12月13日(月) |
『告白』(ヨコヒナ) |
遠い昔に、ヨコに好きだと言った。 そのときのヨコは真っ赤になりながら、「そうか」って頷いた。あれから、なんの言葉もなかったけれど。なんも言わないけれどわかる空気っていうの?距離が「恋人」の距離になったから。 だから俺は、付き合ってるもんだと思ってたんだけど。
「なあ」 「ん?」 「好きや」 「うん」 「・・・・・おい」 「ん?」 「ん、やないわ。なんかあるやろ!」
突然切れられても、さっぱりわからない。 好きだって言葉も結構突然で。びっくりしてたのに。その続きがあるだろって。頷くだけじゃ足りないっていうのなら、あとはなに?
「俺が好き言うて。おまえも好きやったら、そのあとになんかあるやろ?」
イライラした声が聞こえてきて。なにを怒ってるんだろうと思った。けど、なんとなく、ヨコの言いたいことが、今のでわかった気がした。 ヨコも俺が好きで、俺もヨコが好き。両思いならば、そのあとになにかあるのだろうって、こと? 続く言葉があるだろうと、そう言いたいんだろう。 「付き合おう」という、確かな言葉を求めてるのかな? でも、そんなん今更やん。とっくの昔に付き合ってるんじゃなかったっけ?ヨコと俺の関係って、「恋人」じゃなかったっけ? ちゅうもそれ以上もしてるはずなんですが?
「なんっか流されてるようでいややねん!」 「誰がですか。誰が流されて付き合ってる言うん?」 聞き捨てならない言葉に、怒り口調で問いかけると、ヨコは慌てて首をふって否定してきた。 「ちゃう!そーいうんやなくて・・・・・!」 その慌てようから、ヨコがまた言葉を間違えただけっていうのはわかった。 それなら、なんですか。 ただ単純に、「付き合う」って言葉にしてほしいだけ? ほんとに、いまさらなことじゃないですか。なんてあきれてみたけれど。 ヨコにとっては、その言葉は重要みたいで。意外にも、言葉を大事にする人だっていうのを思い出した。
付き合う、ねえ。
しかし、これって。俺に言えっていうこと? そんな空気じゃないですか。 初めての告白も俺からで。交際を申し込むのも俺から?ヨコは頷くだけ?
そんな都合いい話は認めません。
「俺からは言わへんよ」 「はあ!?なんでや!」 「なんでやって。俺は言うたもん、最初に」
好きやって、言ったし。特別だって言った。だからこーなれたんだし。 これ以上、何言わせるの?
「そんなん、俺かて言うたやないか!」 「今言うたのは意味ないやん。最初に言うたことに意味あんねん」 「好き言うんに順番なんてあらへんやん!」 「最初にいうかどうかは結構重要や思うで」
とにかく、俺からは絶対言わない。 ちゃんとした言葉にしてほしい言うなら、それを望んでるんやったら、ヨコから言うべきでしょう?
「・・・・・なんやそれ」 納得いかないと、ヨコが頬を膨らませてるけれど。いつもならワガママ聞いてるけどね。今回はひかないよ?
「 」
結局、ヨコは折れた。 小さな声で、でも確実に聞こえた言葉に。笑顔で頷いた。 今更言葉にしても。なんて思ったけど。 うん、なんか。ちゃんと区切りついたようで。良かったって、思った。
「これから、よろしくお願いしますね」 「・・・・おう」 なんか、付き合ったばっかみたいな気持ちで。ちょっとだけ照れてしまって。自分よりも真っ赤なカオしてるヨコの顔を見るの、ちょっと恥ずかしい思った。
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