2004年04月01日(木) |
『エイプリルフール』(赤ヒナ) |
今日は4月1日。 一年で一回だけ、嘘がつける日。 なら、俺は初めて嘘をつこうって決めた。
たまたま、今年は木曜で。村上くんが東京に来る日。 そんで今日は、やっと会う約束をこぎつけた日。 毎週会いたいって言ってるのに、先約が入ってて。なら再来週は大丈夫やで。なんて電話越しに言われて。 やっと会える!ってそれだけで、嬉しくて約束をしたんだけど。電話切ったあと、カレンダーに赤丸つけたときに気付いた。
会いたいって言っても、すぐに会えないってこと。
長い長い約束を取りつけないと、会える日がないなんて。 これって、もしかして・・・・愛されてない? 俺が好きって思うくらい、好きって思われてない?
そんなはずはない。だって、好きって言ったら笑ってくれたし。 キスも、させてくれたし。 けど、でも・・・・ そりゃ、まだ恋人にはなってないけど。でも俺の気持ち言ったし。知ってるはずだし。 それでもあってくれるんだし。俺のこと、好きでいてくれてるんだって思ってるんだけど。 「そうだ!」 明日、イキナリ。「会えなくなった」って言ったら。どういう反応するかな?少しは慌てたり、がっかりしてくれるかな? 『ええ?なんでぇ?』 なんて、少し暗い声で言ってくれたら。愛されてるって感じしねぇ? 会いたいって思ってくれてるんだって、思うし。 エイプリルフールでした!って言って、笑って。そんで会おう!
当日。 ドキドキしながら約束の一時間前に電話をかける。 「今日、会えなくなっちゃったんですけど・・・」 ニヤける気持ちを抑えて、トーン低く言う。なんて言ってくれるかな?嫌だとか、ストレートに言われたらどうしよ? なんて想像してたのに。返ってきた答えは予想と全然違ってた。 『あ、ホンマ?ちょうど良かったわ』 「え?」 ちょうど・・・良かったって?え?どういうこと? 『俺も駄目になったって電話しよ思ってたとこやねん』 「ええーー!」 『どうしても抜けられない予定出来てもうたんやけど。良かったわ』 「え、ちょ、ええ!」 『また今度な』 「まっ・・・」 待ってと言おうとした瞬間、電話は切られた。
「なんだよーもう!!」 嘘ですって言って終りだったのに。村上くんからも同じこと言われて。長い長い約束も、なくなった。 週に1度の木曜日だったのに。会えなくなった。 気持ちを試すどころか、それ以前の問題だったってこと? 「嘘なんかつかなきゃ良かった・・・」 でも、どうせ村上くんから駄目だって電話くるんだから、一緒か。 「あーあ!」 ベッドにごろんと横になって。ぽっかり空いてしまった時間、どーしよーって悩む。このまま家にいるのも嫌だし。色々考えちゃうから、ぼおっとしてたくない。 「誰か呼び出そう!」 携帯いじりながら、誰にしよう考えて。ある名前でぴたりと止まる。 一月に一緒の舞台して。聞いた番号とアドレス。おもしろくて、いい兄ちゃんって感じで。村上くんとは別の意味で好きな人。 そんでさっき、電話切れる瞬間に聞こえてきた声。 村上くんをあだ名で呼ぶ声。一月に散々聞いたような覚えがある。独特のイントネーションで呼ぶ声。あれは絶対、この人だ。 「東京にいるときくらい、独占しなくてもいーじゃん」 いつも一緒で、今日だって一緒の仕事なんだしさ。 いつだってずっと、村上くん独占出来るのにさ。 「すりーよ!ずるいずるい!ずーるーいー!」 考えたらすっげむかついてきて。 今一緒にいるんだろうし。ちょっとでも邪魔してやる!って思って。イタメルすることにした。
『村上くん独占禁止!』
送信し終わって。なんでバレたんだろうって慌てる横山くん想像したら。ザマーミロって、少しだけ落ちついた。
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