2003年11月08日(土) |
『会いたい』(ぶつアニつうかぶつ←アニ) |
長い、空まで続くんじゃないかってくらい長い階段を登りきると。 ぶっさんの眠る、場所に辿りついた。
「こんなとこに作ったらさあ。 メンドくさくてぜってー来ないよ」
ぶっさんの墓が出来た日。 墓の前でみんなで集まったときに、呟いた通り。 俺は、年に一回しか来なくなった。
バンビは怒ってて。うっちーは困ってて。 マスターは苦笑いを浮かべていたけど。
だって、しょーがねーじゃん。 来たくなかったんだもん。
ぶっさんが眠る、場所になんて。
なんんも、な〜んにも答えない相手に会いにくるなんて。 つまんねーだけだし。
「だって、一人でブツブツ言ってたら馬鹿みてーじゃん?」 なんて、言ったとこで答えが返ってくるわけないし。 単なる『石』に向かって話しかけてる時点で、馬鹿みてーなんだろうなって。苦笑い浮かべた。 けど、今日だけは・・・年に1回だけは。 ここで、この『石』に向かって。話しかけたいんだ。
「ねえぶっさん・・・もう俺、24歳になったよ」
女の子でいう、適齢期だよな。なんて笑って。 ぼんやりと、変わっていく回りを思い浮かべながら、呟いた。
「ぶっさんより、年上になっちゃったよ」
当たり前だよね。 ぶっさんは23歳のまま止まってるんだから。 『生きてる』俺と、『死んでる』ぶっさんじゃ、時間が違うんだって、当たり前のことなんだけど。 1個上になって、始めて思った。 ずっと、小さいときからずぅっと同い年だったのに。先輩になっちゃって。これからはずっと、ずぅっと上になっちゃうんだ。
「ぶっさん好みの、年上になっちゃったよ」
今もバーバータブチで働いてる、ぶっさんよりも年上でも。でもかわいらしい人。 ぶっさんと「結婚」した人。 ぶっさんの、奥さん。 あの人を紹介されたとき。 『年上が好きなんだよなぁ』って言ってたぶっさんの言葉思い出して。ああ、やっぱりこういう人を選んだんだってなんとなく納得して。 あと、もしかしたら残りわずかの命かもしれないけど、一緒にいることを望んだ相手って。
やっぱ、俺じゃ駄目なんだ。
ずっと、思ってた。 ずうっと、小さいときから一緒にいて。これからもずっと一緒にいると思ってたぶっさんが。急に消えてしまうと知って。 それで、初めて自分のなかでのぶっさんの気持ちとか存在の大きさとか思い知らされて。 あらためて、思い知らされたような気がして。
「好き」
その言葉が浮かんでいたけど。 消えて行くぶっさんには、この気持ちは迷惑なだけだって思ってた。 受け入れてもらえるなんて思ってないし。仲間だと思ってたやつから告られても。 優しいぶっさんのことだから、重荷になるって思った。 そんな荷物背負わせたまま逝かせるなんて、出来ないって思った。
だから。 俺、馬鹿だけど一生懸命考えて。 ぶっさんに知られないように、一生懸命隠し続けた。
「けど、言えば良かったかなあ」
マスターは俺の気持ちわかってたみたいで。 ぶっさんの葬式のとき、気持ちを伝えたのかって聞かれて。言わなかったって言ったら。 ため息つきながら。
「馬鹿だなぁ」
なんて苦笑いされた。 俺もつられて笑った。
ぶっさんなら、受け止めてくれたかもしれないって。 あとになって思った。
「ねえぶっさん」
24歳で、ぶっさんよりも年上になった俺。
「今なら・・・・・好きになってくれたかなぁ?」
答えが返ってくるわけないのに。 ぶっさんに向かって、呟いた。
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