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2005年02月01日(火) 『歩兵の本領』

『エリザベート』で気になったパク・トンハさん。
その歌や踊りよりも表現力が気になったので、
次はストレートで観てみたいと思っていたのですが、
日本語の発音が不安で、あと一歩手が出せず。
得チケが出たので安いならと申し込んだのですが、
当日引き取ってみたら、最前列どセンター!(^^;
手を伸ばせば届く階段で役者さんが演技するし、
そんな席で観たいんじゃないんだよぉぉと
焦り泣きつつの観劇となりました。


『歩兵の本領』
全1幕:だいたい19:00〜21:40
紀伊国屋サザンシアター、1列12番
原作:浅田次郎
脚本:和田憲明、演出:杉田成道
出演:窪塚俊介、高橋一生、森本亮治、水川あさみ、
 花王おさむ、こぐれ修、武田義晴、友部康志、鈴木省吾、
 橋爪遼、荻野貴匡、パク・トンハ、的場浩司 

観終わってみて、一番の衝撃だったのが、
開幕直後のパクさんによる ♪君が代 独唱でした。
ほぼ完璧な言葉での見事な歌だったし、彼が何者か
知らない人にとっては何の問題もないのかもだから、
演出に対して文句を言うのは筋違いかもしれませんが。

でも、現実に、主筋にほとんど絡まない役柄の彼が
独唱するのは、観終えても話的に違和感のあることで、
「韓国人が君が代を歌う」というインパクトだけを
狙われたとしか思えない自分に、困ってしまいました。
ものすごく堂々と誇りを持って、かつ丁寧に美しく
歌って下さっていただけに、居心地悪かったのです。
途中での、♪歩兵の本領を口ずさんで通り過ぎる
場面×数回は、そこまでの違和感はなかったけれど、
それでも不思議な使われ方だった気がしたし、
なぜ出演者に選ばれたのかなぁと、少し疑問。

本体部分は、「自衛隊もの」と聞いて身構えていた分、
悪い意味ではなく、大きく肩透かしされた感じでした。
日本の戦争に関しての思いで複雑な気分になったのは、
オープニング他の、ほんのわずかな部分だけで、
基本的に作者の感傷に感情移入する作品という印象。

後でパンフレットを読んだら、作者の言葉の中に、
「自叙伝はそうなりがちだから好きじゃないけれど、
これは珍しく自叙伝的部分の強い作品だ」とあって、
とても納得させられました。「自衛隊もの」といっても、
今の自衛隊とは多分ものすごく違う状態なのだろうし、
およそ、想像していた社会派の作品ではなく、素直に
泣き笑いして、何も残さず終わっていい作品かも。
そういえばRUP制作だし、先に気づくべきだった。

そういう意味で言えば、大きく肩透かしでしたが、
でも、物語として普通に面白かったです。
人物描写がしっかりしていて、個々がとても魅力的で。
特に的場さんの存在感が舞台を引き締めていたと思う。
花王おさむさんも、途中から話は読めるけれど泣けた。

落ちこぼれが1人いると、1個小隊が全滅するから、
突出した1人を作るより落ちこぼれを作らない。
どんな理由があろうと、落ちこぼれを作らないよう
努力してくれるなんて親切な世界は、今どきレア。
「汗と油と煙(だっけ?)の臭いだけで構成された
単純な世界」が居心地いいのも、分かる気もする。
人間が単純化されて幸せな世界なんだなと、
そこを愛しつつも出てくることを選択した人間の
思いに、何となく共感しながら劇場を後にしました。



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