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2004年05月03日(月) WOWOW『おはつ』

<作>マキノノゾミ、<演出>鈴木裕美、<舞台美術>松井るみ
<出演>
松たか子:おはつ(大阪新町「かや乃」の遊女):松たか子
直助(醤油商「橘川」の手代):佐々木蔵之介
正太郎(油商「菱屋」跡取り・直助の友人):小市慢太郎
おれん(私娼):江波杏子、近藤勇:渡辺いっけい、
沖田総司:北村有起哉、深雪:佐藤江梨子
太兵衛:八十田勇一、おもん:歌川椎子
鍵屋万助親分:田鍋謙一郎、丑松:福井貴一
平間重助:武田浩二 ほか


メンバー的に気になったけれど、博多遠征で金もなし、
マキノノゾミは個人的に当たり外れが激しい、
開演時間にも難がありすぎる・・・などでパスした舞台。
WOWOWで放映してくれるとあっては、観るぞ!と期待していて。

目覚ましに頼らずスッキリ目が覚めた直後だったこともあるけど、
中心となる人間が少ないこと、回り舞台などをうまく多用し、
演舞場とは思えないほど暗転の少ない演出だったこと、そして、
場面転換もちゃんと遠景にして見せてくれたカメラワークなど、
いろんな条件が重なり、生で観てない舞台を映像で観たのに
最後20分ほど以外は飽きることなく真剣に観られた。すごい。
何本か立てられた柱を基本に、障子を立てて遊郭にしたり、
太い丸紐を渡して森に見立てたり、とてもきれいな舞台。

その中で主演の松たか子、負けじと美しかった。
自分の名を、人形浄瑠璃『曽根崎心中』と重ね合わせて、
見事に恋に死んで物語として残ることを夢見る遊女。
正太郎と夫婦の契りを交わしていながら、彼の親友である
直助にあっという間に心を移す。理由はといえば、彼女に
持ち上がった近藤勇からの身請け話に対して、親友の
正太郎の代わりに命を懸けて闘おうとしてくれたから。

その後、恩ある菱屋を裏切って金を持ち出してまで、
おはつと一緒に生きようと努力する直助に対して、
事あるごとに「一緒に死んでくれ」と繰り返す おはつ。
正太郎に対する態度など、かなり酷いものもあって、
夢想癖のある我がままな女の子と見えなくもないけれど、
この張り詰めた輝きはどこから来るのかと思っていたら、
労咳病みで長くはない命と知れる。この疾走感はそのせいか。
最後、直助が殺されてからの長ゼリフは少しだれたけれど、
そこまでの勢いは、本当に素晴らしかったと思う。
いつも思うけど、彼女の本領は時代劇なんだね。

直助も良かったんだよなー。
彼は、おはつに出会ってしまったタイミングが悪かった。
もともと道場に通って、目録を授かるウデでもあったけれど、
剣に生きたり殺されたりするような人間ではなかったはず。
それが、たまたま浪人風の侍に町人が刀を持つなと絡まれ、
争ううちに、斬ってしまった通常ではない精神状態の夜に、
死に向かって走る美しい女に出会ってしまった。

普段なら親友の女を取ったりする男ではないけれど、
こびりつく血の匂い、町人をバカにして見える近藤への反感、
それらから、刀で決着をつけようと言ってしまう気持ち。
その思いを「勝ってくださいませ」とただ1人認めてくれた
彼女がしのんできた時、当然のように抱いたんだと思う。
その狂気が、本当に魅力的だった。「運命」ってあるんだなと。

正太郎は、ぼんぼんらしい品の良さが魅力的だった。
添い遂げようと心に決めた女と親友に駆け落ちされても、
親友が盗んだ金の後始末をし、彼らの居場所を見つけて、
女にいいものを食べさせてやってくれと、高価な刀を置いて去る。
絶対、こっちと一緒になった方が幸せになれると思うんだけど、
「一緒に生きる」という選択肢がない おはつにとっては、
そんなこと、何の価値もないんだよな。相手が悪かったよ。
またいい女に出会えるよ。強く生きろ。

近藤勇は、身請け話に出てくるのと、
最後、実は直助が殺した浪人が逃げた平間重助であるが故に、
秘密を知る者はいてはいけないと、直助を殺るために出てくる。
まあ、渡辺いっけいなんで、想像どおりの安定感という感じ。
沖田総司は、あっ軽い。ちっとも美少年でないおしゃべり君。
場面から浮き上がるほどイっちゃってる感じが、却って怖い。
彼は、劇場で観た方が良かったんだろうなと しみじみ。
映像だと恐ろしさよりも浮いた感じの方が目立って残念。
でも、キメどころは多いし、おいしい役だよなーという感じ。

もう1人浮いていたのは、深雪を演じた佐藤江梨子。
彼女は・・・下手なんだよね?う〜ん・・・。
そういうキャラと思えなくもないけれど、「キャあ〜〜」とか
「イヤあ〜〜」が、間違ったコメディのように失笑ものでした。
近藤に身請けされた時点で、太夫だったと気づきショックだったよ。
むしろ1枚で売ってる夜鷹の おれんさんの方がまだしも品がある。
おれんさん、沖田に何を感じて惹かれたのか。色気が良かったな。

何せ、3時間、TVの前でほぼ飽きずに
真剣に観られたからすごかった。とにかく「きれい」だった。
最後、京で武士になろうと決めた直助と おはつが
『曽根崎心中』道行を歌いながら進む場面も、美しかったし。
そういえば関係ないけど この場面、直助の髷が、今まで、
ずっと商人風に後ろにふくらみを作っていたのに、武士風に
なっていたのに気づいた自分に、ちょっと感動してしまいました。
さすがに4か月も時代劇見てると、少しは覚えるんだなぁとか。
いや、本当に関係ないんですけど(^^;



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