透明思想。 |
2008年02月07日(木) 北原白秋版「まざあ・ぐうす」より拝借 |
こまどりのお葬式(ともらい) 「だァれがころした、こまどりのおすを」 「そォれはわたしよ」すずめがこういった。 「わたしの弓で、わたしの矢羽(やば)で、 わたしがころした、こまどりのおすを」 「だァれがみつけた、しんだのをみつけた」 「そォれはわたしよ」あおばえがそういった。 「わたしの眼々(めめ)で、ちいさな眼々で、 わたしがみつけた、その死骸(しがい)みつけた」 「だァれがとったぞ、その血をとったぞ」 「そォれはわたしよ」魚(さかな)がそういった。 「わたしの皿に、ちいさな皿に、 わたしがとったよ、その血をとったよ」 「だアれがつくる、経帷子(きょうかたびら)をつくる」 「そォれはわたしよ」かぶとむしがそういった。 「わたしの糸で、わたしの針で、 わたしがつくろ、経帷子をつくろ」 「だァれがしるす、戒名(かいみょう)をしるす」 「そォれはわたしよ」ひばりがそういった。 「あかるいならば、くれないならば、 わたしがしるそ、戒名をしるそ」 「だァれがたつか、お葬式(ともらい)にたつか」 「そォれはわたしよ」おはとがそういった。 「葬(ともら)ってやろよ、かわいそなものを、 わたしがたとうよ、お葬式にたとうよ」 「だァれがほるか、お墓の穴を」 「そォれはわたしよ」ふくろがそういった。 「わたしの鏝(こて)で、ちいさな鏝で、 わたしがほろよ、お墓の穴を」 「だァれがなるぞ、お坊(ぼう)さんになるぞ」 「そォれはわたしよ」白嘴(しらはし)がらすがそういった。 「経本(きょうほん)もって、小本(こほん)をもって、 わたしがなろぞ、お坊さんになろぞ」 「だァれがならす、お鐘をならす」 「そォれはわたしよ」おうしがこういった。 「わたしはひける、力がござる、 わたしがならそ、お鐘をならそ」 空(そォら)の上からみんなの小鳥が、 ためいきついたりすすりなきしたり、 みんなみんなきいた、なりだす鐘を、 かわいそなこまどりのお葬式(ともらい)の鐘を。 ややややややばいでしょ 今まで見てきたどの訳より断然好きだ。 |
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