Deckard's Movie Diary
indexpastwill


2002年06月05日(水)  UN loved ノーマンズ・ランド

 カンヌ映画祭レイルドール賞、エキュメニック新人賞のW受賞!というふれこみの万田邦敏初監督作『UN loved』。一体どういう賞なんだか全く知りませんが、とりあえずカンヌで評価された邦画ってワケです。だから私は観に行きました。観終わって「なるほど!カンヌが評価しそうな映画だわい!(苦笑)」。ヒロイン光子(森口瑤子)は自分らしく生きるコトが全て!という考え方の女性で、自分らしければ、自分が無理しないで生きていければ、それこそが最高の人生。と思っている訳です。で、彼女に青年実業家の勝野(中村トオル)やフリーターの下川(松岡俊介)というあまりに単細胞な男達が絡んで・・・という話なんですが、いかんせん、このヒロインが嫌な女で、もう辟易。「自分に嘘をついたり、無理してまで欲しいものなんかない!」と言えば聞こえはいいですが、言い方を変えれば、全く相手の気持ちを考えない自分勝手な女です。多くの人間が持っている下世話な弱さを全く受け付けません。そんなモノは必要ないんだ!と言われてもねぇ。勝野が問います。「何故にオレの誘いについてきたんだ?」「貴方は私を誘った。私には断る理由がなかった・・・」だって!お前はロボットか!しっかし、中村トオルも森口瑤子もヘタだなぁ・・・・。

 カンヌがダメならアカデミー賞があるさ!というワケではないんですが、あの『アメリ』を押さえてアカデミー外国映画賞受賞の『ノーマンズ・ランド』。いやぁ、参りました。こりゃ、傑作だ!ボスニアとセルビアの中間地帯の塹壕に取り残された敵対する兵士2名。二人を取り巻く理不尽な現実をユーモラスな空気で包みながら、道化とかした人間の愚かさを焙り出しています。淡々と進みあっけなくラストを迎えるこの映画にはある種の「軽さ」が付きまとうのですが、それはいつのまにか胸の真ん中にポッカリと開いてしまった大きな穴のせいかもしれません。「戦争なんて自分にふりかからなければ、全て他人事。」何とかしようが、しまいが、結局はどうにもならない矛盾が底なし沼のように広がっているワケで、ラストショットはどうしようもない戦争の空しさを象徴するカットとして永遠に心に刻まれるでしょう。監督はボスニア・ヘルツェコヴィナ出身の32歳。ダニス・ダノヴィッチ。果たして、今後デビュー作を越える事が出来るのでしょうか?


デッカード |HomePage

My追加