2005年11月11日(金) |
友として 落ち込んでる君に優しい言葉をかけたいけど、ひいき目で見ても罵声しか見つからないよ...nochanです |
昨日電車の中で、 生まれて初めて「この人、痴漢です!!」という ドラマの第1話(その後、その二人が恋に落ちる)にあるようなシーンに出くわした。
ウォークマンを聴いてた僕も思わず止めて、声のする方を見る。
ざわざわとする車内。
誰かスーツ姿の男性らしき手を掴みあげ睨むOL。
掴まれた手の男性を見ると40歳ぐらいで どこにでもいそうな普通の中年男性。 顔が驚きと戸惑いの表情に満ちている。
ざわざわとする車内の中、電車が駅に着き 誰か別の男性が「駅員よべ、駅員!!」「逃げないようにおさえておけ」という声が響く。
痴漢だといって掴まれた男性はホームに下ろされ、 驚きで声がでないのか、首を横に振り、 絞り出すような小さな声で「違う」とジャスチャーしている。
しばらくすると駅員が数人やってきて 痴漢したという男性と被害にあったという女性に事情を聞いていた。 女性は半分涙・半分怒りながらヒステリックな声で 興奮してまくしたてていたが、興奮しすぎて何を言ってるのか分からなかった。
駅員が今度はその痴漢をしたという男性の方に 「痴漢行為をしたのは事実ですか」的なことを質問すると、 驚いて何が起きているのか分からないでいた男性は、 一度目をつぶって深呼吸をして口を開いた。
「わたくしは何もしてません。本当です」
初めて発声したその男性の声が まるでオペラのテノール歌手のように低く、美しく、そして甘く響いた。
しばらくの沈黙の後、 「....いい声ですね」「パヴァロッティみたいだ」「伊武雅刀声だ」 とホームのやじうまが ひそひそとざわつきはじめる。
「本当に違うんです。何かの間違いではないですか!!??」
....あまりに心地よい声の無実釈明。 聴いていると耳の奥を優しく撫でるようなベルベット感触がたまらなくなる。
駅員や被害にあったという女性に対して 身ぶり手ぶりを合せて力強く何度も無実を主張する男性の姿に ちょっとしたオペラ歌劇を観てるような気分なった。
もっと聴きたい。
もっともっと聴きたい。
もっとその甘く、低く、とろける声で、僕の耳に無実を釈明してほしい!!
その思いも届かぬまま、駅員の残酷な
「ま。とりあえず、お二人とも鉄道警察がもうじきくるので 駅員室の方にきていただけますか?」
というひとことで、地下鉄駅ホーム歌劇が終わってしまった。
駅員につれてかれる男性を尻目に やじうまがちりじりに散っていく。
僕も身を引き裂かれる思いで、その場を離れようとした時 となりにいた中年男性が
「もしほんとに痴漢だったとしても、あんなイイ声だと無実に見えちゃうよね」
と話しかけてきた。
僕も
「そうですね。。。録音してケータイの着ごえにしたかったですね」
と言って後ろ髪を引かれつつ、笑いながらホームをあとにした。
朝の連続小説らうんじ 『ごりょんさん』 第1話 完。
※ごりょんさん.... 「博多の商家の女房をさし、忙しく出歩く旦那衆に代わって家内を取り仕切るしっかりもの」の意味。 ちなみに今日らうんじの内容と全く関係なし。なんとなくありそうなんでつけてみた(*>з<*)
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