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210 胸の痛い思い出

小学5年生の頃の話だ。
クラスに優等生タイプの、比較的おとなしい男の子がいた。冬でも常に半ズボンで、勉強ができて、スポーツはちょっと音痴、何が正しくて何が間違っているのかを、ちゃんと把握していると思えるおとなしいやつだった。
小学生にとって重要なのは、勉強ができるということじゃなく、スポーツができたり、ゲームがうまかったり、イタズラを先頭きってやったり、そういうことだった。その点彼は言ったとおり、スポーツはいまいち、ゲームは家が厳しくもっていなく、マジメなためいたずらとは無縁だった。だからクラスにおいて彼が人気者であったということはなく、どちらかというと脇役。どこのクラスにも必ず一人はいる優等生だ。
もちろんみんな彼がいいやつだって思ってたし、実際いいやつだった。スポーツはできなくても、いたずらをしなくても、一目おいていた。俺にとっても、選択肢が○と×があったとして、重要なのは自分が○か×かではなく、彼がどちらを選ぶか、というくらい彼の行動は気になった。
その点俺はというと、やっぱりそれなりにいたずらをする普通のやつだった。(まぁ何が普通なのかわからないけどね)率先していたずらをしていくやつじゃないけど、みんなに混ざってほどほどにやっちゃいけないことをやっていた。
あるとき、放課後に校舎内でサッカーをするのが流行っていた。みんな知ってのとおり、廊下は走っちゃいけません。何度怒られたことか・・・。「廊下を走るんじゃない!」と。それなのに廊下や教室でみんなでボールを蹴りあうわけだから、これは立派な悪事だった。かわいいもんだ。
俺らがそんな風にボールを蹴っている中、彼がたまたま教室にやってきた。忘れ物でもとりにきたのかな?
誰かが言った「一緒にやろうぜ」
もちろん彼は断る。それはやってはいけないことだ。見つかれば先生に怒られる。でも断りきれない人のよさもあり、うちらのあまり見ていて喜ばしくない押しの強さもあり、しぶしぶ彼もやることに。
そうして彼も混ざって、みんなで校舎内をボールを蹴りあう。机や椅子にガンガンあたる。何か壊れたものもあっただろう。ボールは何度となく壁や天井に跳ね返り、ピンボールのように教室を跳ね回った。机の中に入っていたお道具箱が、ボールのあたった衝撃で落ち、床に散らばる。教室の後ろに貼ってあったみんなの習字は、ボールがあたってやぶける。
そして当然のごとく先生に見つかり、怒られる。
「またおまえらか!校内でサッカーなんかするんじゃない!それに下校時刻はとっくに過ぎてるだろ!」
当然の報いだ。慣れたもの。逃げようとしたり、聞き苦しいいいわけをしたり。
そんな中、彼が先生に見つかった。
「なんだ、珍しいな。おまえもやってたのか?」
小学生は残酷なもんだ。みんなして言った。
「彼もやってました!」
「一緒にボール蹴ってました!」
たぶん優等生の彼が本当に怒られるのか見たかったんだろうな。あぁ・・ほんと残酷。泣きそうになりながら、堪えて彼は言った。
「ごめんなさい。僕もボールを蹴っていました。本当にごめんなさい。もうしません。」
そして彼は涙ぐんだ。
俺らからすれば、それは素直過ぎた。そんな風に謝るやつなんかいない。素直じゃないんだ、みんな。
たぶん一緒にやってたやつみんなが後悔したと思う。すごくイヤな気分だった。あまりにも彼に申し訳なさ過ぎて。彼は「強引に誘われて・・・」なんていう、俺らだったら当たり前のようにするいいわけもせず、うちらを責めもせず、素直に謝ったわけだ。
先生がいなくなったあと、みんな彼に謝った。
彼は言った。
「別に君らのせいじゃない。僕がいけないんだよ。」

そのときの彼の姿は印象深く、今でも記憶に残っている。
2005年02月15日(火)

VOICE / マッキー

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