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1988年7月12日、 映画監督のジョシュア・ローガンが亡くなりました。 (享年79歳)
バス停留所 Bus Stop 1956年アメリカ ジョシュア・ローガン監督
ほかにも『ピクニック』『草原の輝き』などが知られる ウィリアム・インジの戯曲の映画化です。
セックスシンボルといえばこの人、な マリリン・モンローが、 アクターズ・スタジオでの演技の勉強を経て、 「女優気取りの売春婦」とタカをくくっていた ローガンをすっかり魅了し、 公開後は、 「モンローがついに女優になった」と 騒がれた…んだそうです。 (と、森田信吾氏のコミック『栄光なき天才たち』で読みました)
バス停留所、といっても、 バスが1時間に1、2本しか来ない地方で育った娘が、 東京に出てきてから、タイムテーブルを見て 「わぁ、3〜5分おきに運行だって!やっぱ東京はすごいなぁ」 と大声で驚いて恥をかいたり(トホホな実話) 酔っ払いが前後不覚の状態で家に持ち帰ったりする(実話?) 例のポールが立っているだけのアレではなくて、 簡易な宿泊施設もあるような 長距離バスの停留所が舞台です。
フランス語で“かわいい奴”を意味する シェリーという名の歌手(モンロー)と、 そんな彼女に一目惚れし、 “チェリー”と訛った読み方で追いかけ回す 朴訥なカウボーイ、ボウ(ドン・マレー)を中心にした、 微笑ましくもコミカルな人間ドラマでした。
都会で一流の歌手になることを夢みる娘と、 投げ縄自慢のモンタナのカウボーイは、 一生知り合うこともなかったかもしれないのに、 たまたまバス停留所で出会ってしまった… 人がある地点からある地点まで移動するってことは、 つまり1つの人生が移動するってことなんだな、などと 考えてしまいました。 何しろ、さまざまな人生が一堂に会する場所は、 この映画のような“バス停留所”を初め、 世界中の至るところにあります。 それも、それと全く意識しないようなところに。 平凡な毎日も、ちょっとした外出だけで、 ドラマに触れる糸口になり得るのですね。 ましてやそれが、遠い距離を運んでくれるバスと、 それに乗ろうとする人々の間ならば、なおのことです。
ボウは、シェリーこそが我が人生の伴侶と思い込み、 嫌がる彼女を 強引に自分の田舎に連れ帰ろうとしますが、 そんな自分の流儀をシェリーに批判され、 ハタチ過ぎて遅ればせに「成長」のごときを見せる 体の大きな少年というような印象でした。 シェリーの方は、それまで数々の恋に破れ、 ストレートに自分への思いをぶつけるボウに 結局はほだされていきます。 素朴といえば素朴な、全く直球、ある種正統派の ラブコメディーなので、 今となっては少々古くさいお話ではありますが、 映画全体が持つ、温かみのある雰囲気は お勧めするに値します。
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