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2001年05月11日(金) |
サイダーハウス・ルール |
1年366日、毎日の誕生花というのがあるそうですね。 で、本によって若干ずつ違うかもしれませんが、 一応今日5月11日の花は、「林檎」だそうです。 ひょっとして、温暖な地方の方は ごらんになったことがない光景かもしれませんが、 林檎の花が白く咲き誇るさまは、 何とも清らかで、心温まるものですよ。
そこで今日は、林檎園が舞台になった映画を御紹介します。
サイダーハウス・ルール The Cider House Rules 1999年アメリカ ラッセ・ハルストレム監督 ジョン・アーヴィング【サイダーハウス・ルール】文春文庫
原作は、いわゆるジョン・アーヴィング三部作の1本です。 既に映画化され、高く評価されているあとの2本は、 「ガープの世界」と「ホテル・ニューハンプシャー」。 私はこの2本とも、原作も映画も大好きです。 「サイダー…」だけは不可能といわれながらも、 かなり以前から映画化の話はあったようです。 今年で四十路のマシュー・ブロデリックが主演候補という記事を、 80年代に読んだことがあるので、 これが走りだったのではないかと思います。 そして、あのレオナルド・ディカプリオも、 ちらりと主演のウワサがありました。 レオ君は、あの「ブギー・ナイツ」主演の話もあったそうなので、 話題作やらいわくつきの映画については、必ず出る名前とも言えます。
原作の発表からようやく16年、 なんと、アーヴィング自身がものした脚本で、 監督があのラッセ・ハルストレムで、 主演は、地味ながら一度見たら絶対にその演技が印象に残る トビー・マッガイアです。 「カラー・オブ・ハート」や「アイス・ストーム」の 彼の演技はすばらしかった! そして、脇ながら重要なラーチ医師役は、 ショーン・コネリーには蹴られたものの※ 負けず劣らずの貫祿のあるマイケル・ケインというじゃないですかっ。 これで期待するなという方が無理ではないでしょうか? ※コネリーとケインは同じスコットランド出身で親友同士で、 ケインは、自分にラーチ医師のオファーがあったとき、 コネリーに、「君、この役断らなかったか?」と電話した、 というようなことを、インタビューで答えていました。
テーマの1つは、いわば少年の旅立ちみたいなものです。 何度里子に出されても、孤児院に舞い戻るはめになる ホーマー少年は、持ち前の聡明さで 孤児院のスタッフにも子供たちにも、みんなに愛され、信頼されます。 ラーチ医師の助手として医術や医学的知識を授かるものの、 ある日訪ねてきた若いカップルに気に入られ、 彼らの誘いで孤児院を出て、 林檎園で働きながら、外の世界というものを知ります。
ラーチ医師は、尊敬すべき医者ではありますが、 若い頃の経験から、 女性の痛みや苦しみに変に理解があり、 女性たちを抑圧から解放する手助けをしているのですが、 それを手伝っていたホーマー少年が、 医師の行為に疑問を持ったのが、 旅立ちのきっかけともいえました。 抑圧の手助けとは何か?は、 興味のわいた方のみ見て知ってください。 ちょっと私の口からは言えない内容です。 ネタバレというよりは、心情的なことですが……。
映画としての出来は最高です。 素直なつくりで、画ヅラも美しく、 ある要素を除けば、大抵の人が、 「ああ、いい映画を見たなあ」という感慨に浸れるんじゃないかと。 ところが、その「要素」が余りにも大き過ぎて、 それだけで拒否反応を示す人も多いんじゃないかと思うほどです。 そして私の正直な感想は、 「原作と切り離して見られたら、どんなによかったか」 でした。 むしろ、原作に嫌悪感を示したような人の方が、 映画は好ましく思ったのでは?と、個人的には思います。
そんなわけで、分かりきったことを言うようですが、 やっぱり原作のある映画って、まずは映画を見て、 その後原作を読んだ方がいいと思いました。
とはいえ、ヴァージニア・ウルフ原作の「ダロウェイ夫人」みたいに、 原作読んでやっと訳がわかるシーンばっかり というような映画もありますが、 そういう作品は、んもう、ノれるか否かだけですね。 私はどうも、狐につままれた気分になりました。 人間の「意識の流れ」というのは、ああも不可解なものでしょうか? そういえば…… 「クレヨンしんちゃん」映画の何作目かで、 人の心をいともたやすく読んでしまうため、攻撃を先々まで読まれ、 非常に手ごわいという敵が登場しましたが、 その敵も、しんのすけ・ひまわりの野原兄妹の「意識の流れ」は読めず、 混乱してしまうのでした。 でも、「オラとひまわりの頭の中を読んでみろ!」と、 敢然と敵に立ち向かうしんちゃんの姿は、 清々しく感動させてくれますけどね。
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