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2001年04月26日(木) ギルバート・グレイプ

さて、きょう26日は毎月1回の「風呂の日」です。
全国的に、銭湯料金が安くなったりするのでしょうかね。
私の実家の裏と、通っていた高校の隣に、なぜか銭湯がありました。
(ちなみに、両者の間は徒歩10分強ってところでした)
今はどちらも廃業していますが、
ゆっくりとつかりたいとき、よくお小遣いで入った覚えがあります。
「スイカの香りの全身シャンプー」
というけったいなものを雑貨屋さんで買い、
それで全身洗って、ゆっくり手足を伸ばして湯船につかり、
フィニッシュはコーヒー牛乳で決まりです。

というような、銭湯にまつわる映画が全く思い浮かびません。
これは、邦画をあんまり見ないせいでしょうが、
昨日、26日の作品は何にしようと思って、「お風呂」をキーワードに
頭の中で検索したら、一番最初にヒットしたのが、
「お風呂で兄に体を洗ってもらう少年」の姿でした。
(…出来過ぎに聞こえるでしょうが、そういうことにしておいてください)


ギルバート・グレイプ
What's Eating Gilbert Grape

1993年アメリカ ラッセ・ハルストレム監督

ピーター・ヘッジズ【ギルバート・グレイプ】二見書房

映画ファンならば、ぜひこの映画を「ディカプリオの出世作」と
言いたいのでは?と思います。
彼が演じたのは、知的な障碍を持つ18歳のアーニーでした。

ギルバートお兄ちゃん(ジョニー・デップ)は
アーニーをかわいがるし、本当に一生懸命面倒を見ているけれど、
時にはアーニーをうっとうしく思うこともあるし、
ちょっとしたミスから、1人でお風呂に入るのも覚束ない彼を
浴槽に放置し、凍えさせてしまうこともありました。
そのことで、あの風船のようにふくよかなママにひどくなじられるけれど、
自分の大チョンボを認めれば認めるほど、
「どうして自分だけがこんな貧乏クジを引かされるんだ〜」と
理不尽に腹が立っても仕方がないでしょう。
映画を見ていたお客さんは、あのシーンで、
風邪引いちゃったアーニーをかわいそうだと思いつつも、
みんなギルバートの味方だったんじゃないかと思います。

目を離すと、すぐ高いところに登って、
「『アーニーはど〜こだ』って言って」とウルサイし、
食料品店で、知り合いの子供がママにお菓子を買ってもらうとなると、
「キャンディにしなよ、キャンディがいいよ」と
よけいなお節介口を挟むし、
心が優しいのはいいけれど、
自分でバッタを面白半分にもてあそんだくせに、
「死んじゃったー」と、この世の破滅みたいな顔して泣くし、
演じるレオ君のベイビーフェイスのせいもあり、
どうしても、背の高い5歳児にしか見えません。
(差別的に不愉快に響いたら、申しわけありません)

が、その5歳児演技が最も説得力を持ったのは、
実は、風船クジラママが亡くなった後のシーンでした。
村一番の美人が、ストレス等からぶくぶくに太っていき、
子供たちがおもしろがって覗きにくるような姿になってしまい、
ある朝、眠るように死んでいたのですが、
葬儀に当たり、みんなの好奇の目にさらされるのをよしとしなかった
グレイプきょうだい(ほかにギルバートの上に姉、末に妹あり)は、
「ある思い切った行動」に出ます。
それがまた、ただのバカガキならはしゃぎそうなシーンなのですが、
レオナルド“アーニー”ディカプリオは、神妙な面持ちで見守っていました。
ふだんははしゃぎ屋の5歳の少年だって、
ここ一番で、あんな顔をすることがあるものです。
知的な障碍がある→精神年齢が低い→子供みたいに振る舞えばいい、
というのは短絡で、実際の子供って、
もっと知的で複雑なものですよね。
そういう演技になったのが、
監督の手柄なのか、レオ君の資質によるものかはわかりませんが、
あのときの知的な瞳は、
「演技派」の彼のお仕事の中でも一番ではないかと、
密かに思っています。

この映画、ギルバート役のジョニー・デップの抑えた演技もすばらしいので、
未見の方は可及的速やかにごらんになることをお勧めします。
ジュリエット・リュイスも、
(少し化粧が濃かったけれど)
存在がさわやかで、本当に感じのいい役でした。




ユリノキマリ |MAILHomePage