ぼやっきー復刻版
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中3の春、高校入試のために塾に通っていた。 とはいっても、ほとんど遊びに行っていたような気がする。
私は、あるチューターがとても気に入っていた。 恋、までには至らなかったが、 キャアキャアいって楽しむには十分な人材だった。 その人は、7つも年下の私に対して、 対等とはいかないまでも、常に正面から接してくれた。
その人は、二浪してある大学の法学部に入ったが それでも満足出来なかったらしく、 その塾でチューターをしつつ、大学に通いつつ、 仮面浪人をしていた。
私はその人によく手紙を書いた。 今考えると幼かった内容の悩み事に その人は自分の経験談を交えながら 一生懸命(?)答えてくれた。 本の好きな人で、私の誕生日には 2冊の小説を送ってくれた。 太宰治の「パンドラの箱」と ゴールズワージーの「林檎の樹」だ。 両方とも、当時の私には内容が理解出来ず 読みかけで終わってしまった。
受験を目前にしたある日、 興奮した声の友達から電話がかかってきた。
「○○(私)にって、□□さん(チューター)がお守りくれたよ!!!」
二浪したお守りかよ、と苦笑しながらも 素直に嬉しかった。 受験会場には必ず持っていった。
その頃、サイン帳という物が流行っていて、 ご多分に漏れず私も周りの人たちに配っていた。 その人に書いてもらったサイン帳には
「卒業した後も覚えていてくれたら幸いです。 でも、覚えているようじゃダメですよ」
と書かれていた。
それでも私はまだ忘れずにしっかりと覚えている。
あれから7年の歳月が流れた。
そして私は当時の彼と同い年になった。
もし私が今、中学3年の子と接する機会が出来たとしたら 彼のように正面から接する事が出来るだろうか? この年になってみて、彼がとても大人だったという事が分かった。 多分住所は変わっていると思うし もしかしたら結婚しているかもしれないけど 手紙を書いてみようかな、とふと思った。
今日は、彼の30回目のバースデー。
ぱるちん

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