頭の後ろ側の方
夜の草原で開かれるお茶会に
いつからかあたしは
参加できなくなっていたらしい

それは
親を罵ることを辞めたからか
箱庭の外側を見てきたからか
それとも
「  」でなくなってしまったからか

喉に絡みつく程に甘いココアはもう配られない
魔法瓶に入れた珈琲を啜りながら
見上げた空には相変わらずの望月

草原に埋もれた
錆付いたカッター
欠けたカップ
朽ちたノート
インクの無くなった万年筆
鎖の切れた安い十字架

喉に絡みつく程に甘いココアはもう何処にもない

誰もいない草原は
いつからか大分小さくなり始めた
向こうに見えた湖はもう枯れた
煉瓦の時計棟は瓦礫と化した
控え目に夜想曲を歌っていた虫達の屍骸が
風に吹かれて唄を囀る。

喉に絡みつく程に甘く
体を暖めてくれたココアはもう何処にもない
錆びた刃は掠れた赤を腕に描いた
魔法瓶の安い珈琲に映った月は
波紋の形に容易く歪む。

大分冷めた苦い液体で、桃色の錠剤を二つ、飲み干した。
目を閉じて寝転んだその時に
脇を子供が駆け抜けていった
そんな、気がした。
2009年05月28日(木)

AGO。 / 走馬真人

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