帰る場所がない
というのは
一体どんな気持ちなんだろう


海を渡って
養女に来た祖母は
一体どんな気持ちでやってきたんだろう


南から来た祖父に嫁いで
開いた鉄鋼所は継ぐ人がいなくて閉めてしまって
悪くした耳には
それでもまだ痛い言葉が届く

好き、ではない
ただ嫌いでもない
家族として許容はできる
八十年を生きて
至る所にガタの来ている体で
それでもまだ家のことをする
祖母は嫌いじゃない

ゆっくり喋ればいいのにと母に言えば
それはお前が家にいないからだと言われた

ゆっくり喋れば
まだ言葉は通じるのに

長女は嫁いで
次女が名を継いだ
長女の家には戻れなくて
次女の家には歓迎されてない
少なくとも
両親と弟は鬱陶しがっている

帰る場所なんかない
何処にも逃げる場所なんかない
家の中でただひたすら
針のむしろに座るだけ
あたしだったら発狂している

何処にもいけないあの人は
死を望んだりしないのだろうか
2009年03月22日(日)

AGO。 / 走馬真人

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