ひとコマ
何気ない日常のひとコマ

2002年06月09日(日) ホタルの指輪

土曜日の晩、

やはり、疎水沿いのホタルを見に行くことにしました。


南禅寺から哲学の道を経て、

ずっと疎水は北上し、高野川の下へといったん姿を消します。

松ヶ崎の浄水場の前で、地下から再び顔を出す疎水は、

もう水流もすっかり弱まって、一見とまっているような・・・

そんなわずかで静かな水の流れです。

その水のまわりは草が生い茂り、

時折、グゥエッ、グエッ と低いかえるの鳴き声がいたしました。

しばらく行くと、くさのかげに、ぽうっとひとつ光を見つけました。

「ほら、あそこにほたるがいるよ」と話をしていると、

ご近所の方が、

「ここよりもっと西、下鴨本通に近いところに、

ぎょうさんおるさかいに、そこまで行ってみいや」と

おっしゃってくださいました。

そこで、自転車を降りて、西に向かってそぞろ歩いていくと、

ぽぅっ ぽぅっ と、光が徐々に増えていきました。

そして、下鴨本通より少し手前になると、、

桜の木のまわりで、いくつもの光が飛んでいる様子が見られました。

川のすぐそばを飛んでいるホタルは、

その光の軌跡が川面にも映り、それがわずかに揺れています。


ふと、近くで飛んでいた二つの光が、寄り添いながら、

草のしげみに降りていきました。

まぁ・・・カップルになったのね♪  ぽっ


橋の上でうろうろしていたら、

一人の女性が、娘の方にすすっと駆け寄ってきて、

両手を娘の方に差し出し、

「ほら、ホタル・・・♪」と、

娘の手に、そおっと、ホタルをのせてくれました。


ホタルはおとなしく娘の手の上で光っています。

しばらくして、ホタルさんに飛んでいってもらおうと、

娘は木の枝になりきって、人指し指をツンと空に向かってたてました。

それでも、ホタルは飛び立つ様子もなく、

娘の指に、じっととまって、ぽうっと光っています。

それはとても幻想的で美しい、この世にひとつしかない指輪のようでした。

娘は「ホタルさん、ゆうちゃんから離れて行ってくれへ〜ん」と

嬉しいような困ったような・・・やや複雑な様子。

しばらくして、ようやく、

ホタルの指輪さんは、草のしげみへと移ってくれたのでした。



家に帰ってきてから、

南禅寺から北上する疎水の流れのことが気になりだしました。


そして日曜日・・・

買っただけで満足して、本棚に飾ってあった状態の

『インクライン物語』(田村喜子・中央公論社)を読み始めました。

明治初期の京都の様子もうかがえて、なかなかおもしろいです。

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今日もよい1日でありますように・・・♪


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