兎に角日記
三日に一度は兎に角と書いてしまう。

2003年03月08日(土) シンデレラは気が強い

「夫が逝ったあとの妻の生き方」「80歳のラリー・ドライバー」「能登怪異譚」と読み終わって、手持ちがなくなったから図書館へ行った。小雪が降っていたけど雲間からは青空が見えていて、ちらちら光る。こういうのも風花というのかなと思いながら歩いて大体20分くらい。
前、いっぺんに10冊借りられない地元の図書館をけちだと思うと書いたけど、歩いて行くなら結局(重くて)5.6冊が限度。今日借りてきたのはそんなわけで5冊。
それから3冊予約して戻ってきた。三冊とも児童書で、これも以前書いた上橋菜穂子さんのやつとシーラスシリーズ。上橋さんのはあれから3冊増冊されて4冊購入予定で(はじめからそうしてよ)10人待ちだって…いつになるやら。ハリー・ポッターを読もうなんて思うよりずっといいだろうけど、さて来月あたりには借りられるかな。
で、二冊読み終わったところ。久しぶりにゆっくりしてるのは、今週テレビでろくな映画をやってくれないからよ。

『こそあどの森 はじまりの樹の神話』岡田淳
挿絵も自分で描く作家さん。学校の先生をしつつ児童書を書いている人。
こそあどの森はシリーズもので、これが6冊め。
この人の本を好きになったのは、「2分間の冒険」から。それから「扉の向こうの物語」「ようこそおまけの時間に」「びりっかすの神様」ときて、大分影響を受けているかもしれない。ほっとしたい気持ちのときに読むといい。冒険とファンタジーの得意な人。
「ようこそおまけの時間に」を読んだときには中学3年で、真昼の12時になったらおまけの時間がくっついてこないものかなぁと、授業中に時計を見ていた思い出がある。
でも今回のこそあどの森では、「戦い」を出してきた。戦いの概念というか。岡田さんらしくないなと思ったけど……。どうなんでしょうね。もともと冒険を書く人だけど、「話し合ってダメなら、自分を守るために相手を倒す」という考え方をする人だとは思ってなかったか。でも思い出せばいつもそうだったかも、と気づいて少しショック。

『さよなら、「いい子」の魔法』ゲイル・カールソン・レヴィン
―― あのとんまな妖精のルシンダは私に呪いをかけようとしたわけではなかった。それどころか贈り物をしたつもりだったのだ。いくらあやしても泣き続ける生まれたばかりの私の涙を見てひらめいた。
「わたしの贈り物は『従順』です。これからは、エラはどんな命令にも必ず従うでしょう。さあ、泣き止みなさい」 ――

久しぶりにドキドキするような昔話系ファンタジーを読んだ。
ヒロインのエラは「従順」の魔法のせいで、命じられたことは必ずやらなければならない体になってしまう。そして序盤、彼女の母親が亡くなり、エラは父親の命令で、根性悪の金持ち姉妹と一緒に寄宿学校へやられ、ふとした弾みに金持ち・姉に「命令したら必ずエラは従うわ」とバレてしまう。
が、ジクジクといじめられるかと思いきや、たとえ「そこの汚いゴミを拾いなさいよ」と命令されたとしても、拾った後に相手の顔に擦り付けるくらいの事はやってくれる。彼女はへこたれない。機転が利く。
それは、王子様(!)が彼女に惚れてしまうのもわかるなぁというくらいである。
(なんと王子様が出てくるのだこの話は。)
さて、ここから先がネタバレなので、どうか読んでみようという人はここで止しておいてほしいな。

***
物語り中盤。エラの家が破産する。エラは妖精に魔法を解いてもらうため、寄宿学校を出奔したりしてましたが、見つけた妖精に「なんだそんなこと? 従順なのはいいことよ。喜んで従いなさい」と更に命令されたあと。
破産した父親が、金持ちと結婚しなさい。というのを喜んで引き受けそうになるのだが、幸い重ねがけの魔法ではなく、単なる命令だったため、からくも、台所妖精でエラの名づけ親のマンディに「喜んで従うのをやめなさい」と命令されることで助けられる。ちなみにそのあたりでエマは自分が王子を愛していたことに気づくのだけれども……。
そっちがだめになったので、父親が例の金持ち娘たちの母親と結婚することにすることになってしまったのだ。

ここで、継母、継姉妹、結婚したはいいが妻を愛していないので出奔した父、そしてエラ。という図式が成り立つ。
ここで漸く気づきました。これってシンデレラのパロディだったのね!(ていうか表紙をちゃんと見ていれば気づけたはず。鳥かごに入ったガラスの靴の表紙)

魔法のことを知られているエマは下働きとしてこき使われ、王子さまとは手紙のみのやりとり。そして「愛しているので、結婚してほしい」と告白される。
一時は「彼を愛しているしこの生活から逃れられるわ!」と喜ぶエマだったのだが。しかし。
彼女には従順の魔法が掛けられている。このまま王子様と結婚したら、どうなる?
義理の姉が、もしくは敵国が、それを利用するかも! 頭の良い彼女はそう考え、涙ながらに「あたしあんたのことだましてたのよ。お金持ちと結婚するわ」と嘘の手紙を書き、王子様は振られたと思い込んでガックリ。

上手くできてるなぁ! と思った。
私ならこの辺でなんとか魔法が解いてしまうけど、そう、シンデレラならここで終わらず舞踏会に行かねばならんのです。

エマが王子に手紙を書いたと知り、とうとう堪忍袋の緒が切れた妖精マンディは、妖精ルシンダを呼び出し、ルシンダ自身がでリスになって3ヶ月、従順になって3ヶ月暮らしてみるように仕向ける。そうすればあなたが赤ん坊に贈った贈り物が、どんなものだったか本当のところが分かるでしょうよ。といって。(ルシンダはだれかれかまわず勝手な贈り物をして人に迷惑をかけていたので、リスなら幸せに暮らせるはずよ!なんてこともやらかしていた)
エマは、6ヶ月後にきっとルシンダがその贈り物の結果を知って自分の呪いを解いてくれることを信じて暮らす。その間に子供(15歳)だった彼女も背が伸びてきれいになりました。また、隣の国へ行っていた(行ってたんですよ)王子様も帰ってきて、とうとうおきさき選びの舞踏会を3晩続けて行うとか。
そして、とうとうリスと従順の生活を終えた妖精ルシンダが戻ってきました。ものすごーく、反省している様子です。
エマは魔法を解いてくれと頼むが、それは大きな魔法だから、どうしても解けない。とルシンダは言います。
だったら。王子様の顔を見るだけでもいいわ。幸い仮面舞踏会だしね。とエマはいい、ルシンダの力を借りて、おなじみのかぼちゃの馬車と6頭立てのねずみ馬車でお城へ。そしてとうとう舞踏会。

あれ? ちょっとまって。ガラスの靴は?と思われた方。その辺ぬかりはありません。

ガラスの靴は、継母と父親との結婚式の日、エマとエマに会いにきていた王子様とで古城を探検していた際に見つけてありました。エマはそれをはいて出かけます。
一夜目、遠くから眺めるだけにしようと思っていたのに、一緒に踊ってしまう。
二夜目、大分親しくなって。
三夜目、「でも僕には、一生結婚する気は無いんですよ」という王子の告白。
その後で。
嫉妬に駆られた例の義理の姉が、彼の目の前でエマの仮面を取ってしまう。

さて、とうとう出ました。ガラスの靴を置いて猛ダッシュ! 真夜中過ぎて魔法は解け(でもドレスは亡くなった母親のものなので、大丈夫)、彼女は走って屋敷に戻り、そのまま逃走しようとするのですが、やっぱり駆け足と王子様の機動力は比べ物にならなかったらしく、ガラスの靴を持った王子様がやってきます。
「このガラスの靴を履いてくれないか。君ならはけるはずだ」
エマは妖精の血を引き、彼女の先祖は代々妖精の友人でした。そんな彼女は、一般に混じる妖精を見分ける唯一の点である「足の小ささ」を引き継いでいたのです。
義理の姉と妹が試して失敗し、促されたエマはそれを拒むのですが。
「お願い」ではなく「履け」と命令されたら逆らえず、ガラスの靴はぴったりで。
王子様は彼女に改めてプロボーズを。
「結婚して、エラ」それからささやきます。「僕と結婚するんだ、エラ」
流石王子様です。人が良くてとぼけていても、命令口調がつい……。

「従順」の魔法は、強いです。逆らおうとすると呼吸困難、体の痺れ、頭痛に寒気に吐き気に耳鳴り。
ああ、でもあなたとこの国のために、私はあなたと結婚するわけにはいかないの。いかないのったらいかないの。エラは「はい」といいたい気持ちと大分長いこと戦った後で、叫びます。
「あなたとは結婚しないわ! 絶対あなたと結婚しない。誰も私に無理強いさせることはできないの!」
エラは「無理強いなんてしてないのに…」とショックを受けている王子さまに抱きついて口付けて、また叫んだ。「私はあなたと結婚しないわ! 絶対にしないのよ!」

そして、エピローグへ。

***
この世界には、ノームもセントールもオグルも巨人もエルフも居るものとして居る。指輪物語よりはナルニア国物語に近い。
大切なのは、「王子様」が存在しているという点。王子様ですよ。しかも性格が良くて、国民思い。そんな王子様、最近とんと見かけなかったので、もうすっかり絶滅してしまったのかと思っていました。
エラはちょっとビックリするぐらい王室に近い貴族の娘だし(その割りに階段の手すりを滑り降りたりする)、しかも心底悪い人間は存在していないようだったり(たとえば「そこを動かないで」といって100回ひっぱたくとか、「死になさい」と命令するとか)な所が突っ込めるんだけど、それが「上手くできてるけど昔話の柵を飛び越えすぎていないところが良い」と思わせられて、やっぱり昔話はこうでなくちゃね。と。
おかげさまでぐいぐい読んでしまった。エラが前向きなのもあるんだろうけど、全体的に明るく楽しかったですよ。
作者はニューヨーク生まれの女性で、読んでいる間や特にエピローグに、働く女性としてとか、アメリカ的な匂いがするけれど、まぁそれも面白いんじゃないかな。
しかしガラスの靴が出てきた時点で、まったくシンデレラだと気づかなかったのは最近ニブくなったのかなぁ。

ちなみにひとつ。
王子様の名前は「シャーモント」といいまして。
愛称が「シャー」。

…エマが彼の名を呼ぶたびに。
私の頭の中にはガンダ○の彼が。

では、また明日。


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