Experiences in UK
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2003年09月01日(月) 第3週 2003.8.25-9.1 ロンドン南東部大停電、V&A博物館

ロンドンは朝晩の寒さが厳しくなり始め、天気予報にchillyという言葉が目立ってきています。日本の感覚でいうと、冬の気配を感じる昨今です。

(地下鉄のエスカレーター)
イギリスの地下鉄は、地中深くを走っているため、長いエスカレーターや階段を乗り継いでホームにたどり着くわけですが、中には1本のエスカレーターで改札からホームまで行ける場合があります。そうなると必然的に尋常ではない長さのエスカレーターになるわけですが、私がこれまで体験した中でもっとも長いのはグリーンパーク駅の改札とピカディリー・ラインをつなぐエスカレーターです。一番下から一番上の人を見上げると「米粒のように見える」という表現が全く誇張ではありません。
そして、長いからなのかぼろいからなのか分かりませんが、立ち止まって右手を手すりにのせてエスカレーターを上がっていると、上に着く頃には手すりの上に半身を寝そべらせるような状態になります。つまり、ステップと手すりのスピードがずれているのです。動いてくれている限り、そんなことは些細な問題なのですが、この長いエスカレーターが壊れた時のことを思うと、それだけでめまいがしてきます。

(ロンドン南東部大停電)
木曜、こちらに来て始めて本格的な雨の1日になりました。この日の帰りは際どいところで例の災難を回避することができました。ロンドン南東部で発生した大規模停電です。この影響でほとんどの地下鉄が止まり、遅ればせながらtravel chaosが現実のものとなりました。
この日、9時を回ったところでオフィスを出たのですが、グリーンパーク駅の入り口前に人垣ができていました(この時点で、私は停電のことをまったく知りませんでした)。ちょうど人が流れ出したのでついて行くと、改札のところにごちゃごちゃと「お知らせ」が手書きされており、「power failureでピカディリー・ライン他の地下鉄が止まっている」とありました。「は?」と思ったのですが、アナウンスによるとピカディリー・ラインは一部動き出したと言っているようだったので改札を通ってみたところ、3本あるエスカレーターのうち2本が停止していました。どうやら私の乗る西行き・ピカディリー・ラインだけが動きだしたらしく、数分後に電車に乗ることができました。
電車はとくに混雑していなかったのですが、次のハイドパーク・コーナー駅でいったん減速した後、そのまま止まらずに通過したのには驚きました。通過の説明をしている車内放送はよく聞き取れませんでしたが、最近ハイドパーク・コーナー駅から帰るようにしていたところ、この日は気まぐれでグリーンパーク駅を利用した私は、胸をなで下ろしました。
降車駅のサウス・ケンジントン駅に到着すると、駅構内の人影はまばらでがらんとしていました。エスカレーターは、やはりのぼりが1本動いているのみでした。自動改札はすべて閉鎖されていて、車いすなどのための通り口だけが開放されていました。駅員も緊急対応で出払っているのか誰もいません。駅の出入口までくるとゲートが閉じられており、その前に人垣ができていて駅員が説明をしていました。
私はラッキーが重なって、ほとんど通常通りの所要時間で帰宅できました。

今回の大規模停電は、夕方の6時半頃から1時間程度のものだったらしいのですが、以上のように9時頃でも地下鉄はピカディリー他のラインも含めて、ほとんどがまだ正常に動いていなかったようです。
停電当初はそれなりの混乱があったのでしょうが、9時頃の人々の様子を見ていて思ったのは、意外と冷静だということでした。一部に文句を言っている人もいましたが、多くの人はゲートの前で黙って復旧を待っていたり、速やかにバス・タクシーに流れたりしていたように思いました。彼らにはこのようなトラブルに対する耐性があるのでしょうか。

後日談めきますが、翌朝、ちょっとおそるおそる地下鉄駅に向かったところ、しっかりと手書き運行状況板に書きこみがされていました。「Green Park station is closed by fire alert」(通常運行の時はNormal Serviceと手書きされている)とのことで、がっくりきつつもある意味で筋書き通りにへまが続くロンドン地下鉄に頼もしさを感じてしまいました。結果としてグリーンパーク駅で火災が発生したなどということはなかったようです。私は今回はさっさとハイドパーク・コーナー駅で降りましたが。
ロンドンという街は、色んなことが起こるという意味では、NYほど派手ではないけど、地味にエキサイティングな街なのかもしれません。

(V & A 博物館)
週末は例によって、ホテルから徒歩で行けるVictoria & Albert Museumに出かけました。イギリスのみならず日本を含めた古今東西の装飾品・美術品が圧倒的な量で展示されている巨大な博物館でした。ここも無料です。
ひとつ印象に残ったことをあげるとするなら、「What is it?」というコーナーです。中世ヨーロッパで使われていた小物が展示されているのですが、現代人の目から見るといったい何に使われたものなのかがさっぱり分からないものが一同に集めて展示されているコーナーです。ここの展示品だけが、説明(解答)を付されていなかったので、専門家の間でも使用方法に関する定説がないものなのでしょうか。
それにしても、こういう現代の専門家にとって無価値らしきものから非常に価値のあるものまでおびただしい量の展示物です。とにかくなんでも収集して、すべて等しく丁寧に展示して無料公開するところにイギリスの博物館の神髄があるのではないかと思いました。


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