* * 今日の空色 * *
               by * yuk!na



モクジ * カコ * ミライ


2002年06月03日(月) 彼と彼女。

彼女は一度、手首を切ったことがあると言った。
少し痛くて恐怖を感じたのだけれども
今までの苦痛を解くようで
とても気持ちが良かったと言った。

あまりにも気持ちが良かったので
またやろうと何度も思ったと言った。
にも関わらず、その後は切っていないと。

彼女は「彼の顔が忘れらないの。」と哀しげな笑みを浮かべた。
どんな顔だったのか?どうしてその顔で切らなくなったのか?
聞こうと思ったが、なんて言ったらいいのかわからない。
もし、気を悪くしたらどうしよう?
・・・躊躇していると彼女は語り始めた。

「あの日。切った次の日。
 彼に会いに行ったの。
 切ったことは彼に電話で伝えてあったから
 彼も知っていたわ。
 それなのにいつもと何一つ変わらなく
 私を包んでくれた。
 大げさに『心配だ』と言うのではなく。
 『もう大丈夫だ』と根拠のない事を言うのでもなく。。。」

窓辺に小鳥が飛んできて、囀っている。
暫くして、突然、バサッと飛び立って行く。
それを通り越して、もっと遠くの空を見ながら彼女は続ける。

「。。。安心したのよ、凄く。
 同時に泣き付いちゃいたかった。けど、人がいっぱい居てね。
 恥ずかしくて出来なかった。
 その後でね、その日初めて二人きりになった時にね、
 『大丈夫だった?』と初めてその事に触れた。
 ・・・その時の顔・・・・・・。」

息を詰まらせながら言う。

「・・忘れ・・・られなくて。」

それ以上は何も聞けず。
彼女も何も言わなかった。



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