-殻-

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2004年11月18日(木) 偶然

後輩が職場を移るというので、話を聞くと、
驚いたことに僕が出張で毎月行く会社のすぐ近くだった。

腐れ縁というのだろうか。
その後輩は、大学時代に最も激しく僕とやり合った奴で、
それはつまり、お互いに真剣で、認め合っていた戦友だった。

今日はたまたま東京に出張で、奴も同じ学会に来ていた。
まるで学生時代のように、二人で並んで座り、講演を聴いて、
ああでもないこうでもないと議論をする。
周りの人間はさぞ迷惑だったことだろう。

どうせなら泊まりに来い、と誘われ、僕が断る訳がない。
新宿で軽く飲んだ後、小田急で奴の部屋へ向かった。

奴は研究室の同期と結婚し、今は一児の父になっている。
僕等が着いたのはもう22:30くらいだった。
さすがに子供は眠っていたが、懐かしいもう一人の後輩には会えた。
彼女はすっかり母になっていて、それらしい体つきに変わっていた。

後輩と後輩が夫婦で、その生活の場で僕等は酒を飲んだ。
ふすま一枚を隔てて、彼等の息子が寝息を立てている。

過去と現在が交錯する、不思議な空間だった。
僕等はあの頃へ戻ったり、今を語ったり、いろいろな話をした。

夜はすっかり更けて、僕はリビングの隣の小さな部屋へ引っ込み、
彼等は息子が眠る寝室へ去っていった。
彼等の営みがあの小さなヒトガタを作ったのだという事実が、
俄かには僕には認め難かった。
しかしそれは現実で、確かなことなのだ。

違和感と、奇妙な安堵を覚えながら、僕は眠りに落ちた。



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