-殻-

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2003年01月04日(土) 雪に思う

雪で飛行機が遅れている。
使用機はなんとか着陸できたものの、雪は強くなる一方。
除雪が間に合わず、離陸の目処が立たない。

もう搭乗口まで来てしまっている。
窓からは、僕が乗る予定の機体が止まっているのが見える。
その向こう、滑走路には何台もの除雪車が走り回っているが、
どうにも埒が明かないようだ。

暇を持て余して、売店を覗く。
見慣れた土産物がぎっしり詰め込まれた狭い店内。

空港で時間が余ったとき、僕は大抵ビールを一杯飲む。
今日も例に漏れず、カウンターに行ってビールを頼んだ。

ぼんやりと窓の外の雪を眺めながらビールを飲んでいると、
これから雪のない街へ戻ることが信じられなくなる。

この街の冬は、雪灯りでいつも明るい。
僕はそんな、白く染まった冬の街が好きだ。
穏やかな冬の夜道を、あのひととただ手をつないで歩いた日を思い出す。

あたりは新雪で真っ白で、
もう人通りも少ない裏道を、
音もなくゆらりゆらり落ちてくる雪の中を、
黙って歩いた。

あの時の風景、あの時の気持ち、
今でもこんなにはっきりと覚えているんだ。
できることなら、君にそう伝えたい。

そして、君の顔を思い出そうとしたのに、
なぜかどうしても、君の顔だけが靄がかかったようにぼやけてしまう。

君を恨もうとした罰なのかな。
そう思って、苦笑いをしていた。

随分と時間は流れた。
もう、あの夜から9年になる。
君はもうとっくに、君なりの幸せを手に入れた。
僕をこんなところに置き去りにしたままで。

出会いも別れも、雪の中ばかりだ。
冷たい雪、暖かい雪、ひりひりと痛い雪、固く凍りついた雪。


雪のない街にいると、寒さも暖かさも忘れてしまいそうだ。


3時間遅れて、やっと飛行機は飛んだ。
雪のない冬が、僕を待っている。


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しんMAIL

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