-殻-
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ひとつに決めるというのは、何にしても難しい。
増してそれが、比べるにはあまりにも質が違いすぎるものなら尚更だ。 決められないことを「情けない」と罵られ、 取り繕うためについつい調子のいい嘘をつく。 実際はなにひとつ決められていないのに、 ずっと前からわかっていたような顔をする。 よくドラマとか小説で、 「あなたは人を傷つけないようにと言うけれど、 ほんとは自分が傷つきたくないだけなのよ」 って台詞があるけれど、 今の僕はこの陳腐な言い回しの奥深さを実感している。 陳腐になるほど使い古されるということは、 それだけの需要があるということなんだなあ、と感じる。 他人事のように語る癖も、どうにも治らない。 むしろ酷くなっていくような気さえする。 ずっと「泣きたいのに泣けない」とこぼしていた君でさえ、 二回も泣かせたのに、 僕自身は欠伸をしたとき以外に涙を流すことはない。 そんな自分を冷たいとすら思わず、 表面的に、刹那的に埋め合わせては日々をやり過ごす。 そうやって過ぎていく時間は、信じられないほど早い。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |