-殻-

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2002年11月14日(木) 君は時間さえも残してくれなかった。

僕等の時間が止まったのは、4年前の10月だった。
些細なことだったけど、君の警戒水位をついに越えてしまったんだ。

訳がわからないままに僕は飛行機に乗り、帰ってきた。
きっといつもの喧嘩みたいに、すぐ元通りになるさ。

ところが、だ。

どう取り繕っても君は聞く耳を持たなかった。
今思えば、きっと君はとっくに決断していたんだろう。
ただ、その結論に一歩踏み出すために、僕の一言が必要だっただけなんだ。

11月10日、君の誕生日に、僕は以前からの約束通りに、
壁掛けの時計を贈った。
君から電話があって、ちゃんと部屋に飾ってある、とだけ言った。

僕は、11月の末にもう一度君の街へ飛んだ。
君は、僕が贈ったアクセサリーを何一つ着けずに現れた。

帰りの飛行機の時間ぎりぎりまで、僕は話した。
君をつなぎとめたかった。

君は、僕を見送りもせずに、駅であっさり別れた。

僕はひとり空港に向かい、飛行機に乗った。

空港は雪とのアナウンス。
着いてみると、僕の街はすっかり白く染まっていた。
僕は真っ白い雪を踏みしめながら、冷え切った部屋のドアを開けた。

明かりをつけ、ふとベッドの脇に置いた目覚まし時計を見た。
それは、いつかの僕の誕生日に、朝が苦手な僕のために君がくれたもの。
時計は、電池が切れて止まっていた。

今朝は動いていた。今朝もこの時計で起きたのだから。

僕は、そっとその時計を手に取った。
時計の針は、午後4時を差していた。

それは、

さっき君が最後の言葉を発した時刻。




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