-殻-

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2002年07月02日(火) 抽象

「ねえ、」

裸のまま、焦点の合わない瞳で一服している君に向かって僕は言った。

「どうするの?」

君は虚ろなままの視線をゆっくりと、左回りに僕の額あたりに運んでから
ふぃーっと煙を吐き出した。

「どうって?」

君は少し苛立っているように、トントンと頻繁にタバコの灰を落とす。

「いや、だから、」

僕は君がまた崩壊するのを恐れて、慌てて付け足した。
君はこういう抽象的な物言いが嫌いだったね、そうだったね。

「僕は、どうするべきなんだろう?」

君はじゅうっと思い切り煙を吸い込んで、2回に分けてふうっふうううっと
鼻から紫煙を溢れさせながらまたトントントンとタバコの灰を落とした。

「だから、どうって?」

君は声を荒げて、タバコを弾く指に力を込めた。
7回目でタバコの火が灰皿に転げ落ちた。

そして忌々しそうに、手元に残った短いタバコで、落ちた火種をぎゅっともみ消した。

「いや、つまり、」

僕は君の爆発を恐れて、かぶっていた布団を体に巻きつけて壁際に寄った。
そうだった、君はこういう抽象的な物言いが嫌いだったね、そうだったね。

「僕はこういう状態で、君はそれを受け入れて、」

僕は必死に具体的な表現を探した。

「そして僕らはこれからどこにいけばいいのかな?」




ぷちっという音が聞こえたような気がした。

でも次に聞こえた音はタイマーでセットしておいたテレビの朝のニュースだったから、それが確かかどうかは確証がない。

なんだか、顔が熱い。視界も狭い。


君の姿はなかった。
君のジーンズはまだ枕元に無造作にねじれていた。

君がどこにいるのか、僕は知らない。
そういえばあれ以来、もう3年くらい君の姿を見てないね。


元気ですか?


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しんMAIL

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