-殻-
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昨日は同期の女の子とゴハンを食べた。
彼女は駅で待っていてくれて、二人で一つの傘を差して店まで歩いた。 他愛のない話をした。 ちょっとした噂話。 彼のこと。 仕事のこと。 帰り道、寮まで歩いて帰るって言う僕に彼女は 「傘、持ってっていいよ。」 という。 僕は断った。 「だめ。絶対ダメ。持ってって。」 彼女は言う。 コンビニがあるからビニール傘を買っていく、と僕が言う。 「じゃあ、あたしが買ってあげる。」 彼女がそう言って、自分で買うからと止めるのも聞かずに傘を買う。 「会社の置き傘にでもしてよ。」 彼女は言う。 僕は、ごめんな、ありがとう、と言って彼女と別れた。 雨は、天罰のようなものなんだろうか。 ただ濡れて歩くことくらいで、少しだけでも贖罪になるだろうか。 濡れて行こうと思ってた。 雨を受けることが、精一杯の抵抗だったのかも。 でも、僕は救われてしまった。 惨めな自分を、ずぶ濡れの自分を想像することで慰めようとしてた。 彼女はそれを許さなかった。 そう。 雨の日には誰だって傘を差すんだ。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |