-殻-
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母親から電話が来る。
なんだか嬉しそうなのが受話器から伝わってくる。 確かに話をするのは久しぶりだな、と言っても一月くらいかな。 以前は滅多に電話に出ることのなかった親父までが、わざわざ母親から電話を代わってまで僕と話したがるようになった。 これは何とも言えず、くすぐったい。 二人ともどんどん年を取っていく。 なのに、僕はまだこんなところで、あなたたちに心配をかけてばかり。 それでもあなたたちは、こんな僕を誇りだと言ってくれる。 ああ、 違うんだ。 僕こそ、あなたたちを誇りに思ってる。 僕こそ、あなたたちに感謝しなければ。 あなたたちに何もしてあげられないのに、素直に「ありがとう」さえ言えない。 こんな僕が誇りですか? こんな僕なのに、どうしてそこまで愛せるのですか? 親だからですか? 僕も親になったら、わかるのですか。 あなたたちのような、大きな大きな、無償の愛情を持てるのですか。 わからなくて、 わからないからこそ、 あなたたちに恥じない生き方をしようと思うんです。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |