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午前中のこと。 突然実家からの電話が鳴った。
電話に出ると父からだった。 父は電話の向こうで泣いていた。
「リュウ君が…、リュウ君が…、ウッ…。」
リュウ君とは実家のパグ犬の「龍之介」のことだ。 父の話によると、1月に死んだパグ犬のリリーと同じ症状がリュウ君にあらわれたとのこと。 私はあわてて車を出した。
どうか最期のときに間に合うように…。
「りゅ、リュウ君!!」 実家のリビングには毛布にくるまれたリュウ君が…。 その横では父がうなだれて涙を流していた。 母はリュウ君の下に敷いてあげる毛布を探しに2階へ上がっていた。
毛布の中のリュウ君に恐る恐る声をかけてみた。
「リュウ君…。」
すると毛布がモコモコと動き、ちょっとぐったりしたリュウ君が顔を出した。 思ったよりは元気そうに見える。
毛布を持ってなみだ顔の母がやってきた。
「ふつ、お願い!リュウ君を病院に連れて行ってくれる?」
と、涙でぐちゃぐちゃな顔の母が言った。それに対し父は
「いいんだ行かなくて!!どうせ安楽死の注射をうたれるだけなんだ!!」
と猛反対した。 父は病院に連れて行くより少しでも長い時間家族といた方がリュウ君のためだと言う。 母はできることはしてあげたいと言う。
「オレは病院など行かねーからなっ!!もーこんな悲しい思いはいやだ!!」
と男泣きしていた。
…で、父は家において病院へ連れて行ったのだが
「リュウ君は風邪ですね。」
と先生に言われ、注射を一本うち無事帰宅した。 もー、お父さんの早とちり!! しかし先生に
「こんなに長生きしているパグはあまり見たことがないよ。お父さんをほめてさしあげたい。」
とほめられたのだった。 パグの面倒を一手に引き受けているのは父だった。
私の実家ではリュウ君の父親である「プー助」も健在だ。母親である「リリー」は今年天国へ旅立ってしまったが、リリーもパグ界ではかなりのご長寿さんだ。 特別なことは何もしていないと思うのだが、なぜかみんなご長寿さんだ。 きっと父の愛情のかけかたが良いのだろう。 母も口ぐせのように
「お父さんと結婚してよかったー。しあわせー♪」
と常日頃言っているし、我々子供たちも父の愛情を感じながら成長したって感じは確かにあるなー。 「無言の愛」の放出量が多いのだろう、父は。(放出量?自分でもわけわからん。)
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