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「暗幕」日記

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2011年01月10日(月) 夢記録:校庭

ホームルームが終わって階段を降りる窓から、Kとその仲間たちが座り込んで待っているのを認めて気が重くなった。間違っていると自分でも思う。Kは私の護衛のために、本当ならもっと早く帰れるはずが、遅れてホームルームの終わる私の組を待っていてくれているのだから。
けれども私が靴を上履きから履き替えて、学生かばんを下げて近づいていっても、彼らは私にはよくわからない専門用語で仲間内の話し合いをやめない。そもそも、私が来ているのに気づいているかも怪しい。顔を上げさえもしないのだから。
「トイレ入ってくる」誰かに聞こえたかどうかも分からない小声で一応は言ってから、私は回れ右をして裏門に向かった。きょうは塾で試験のある曜日だ。このままだらだらと、Kたちと過ごす時間が惜しかった。自分で言った言葉が引き金になったのか、本当にトイレに寄りたくなって、靴を替えて校舎に入った。トイレから出てくると少し頭が冷えていた。
小さいころからKを知っているけれど、家があんまりお金持ちじゃなくて下品なことばかりいうけれど、成績はあまりよくなくて制服を着崩してときには校則を無視してバイクに乗ったりもするそうだけど、私はKがやさしい子で、頼まれたことはやりとげる律儀な部分を持っていると知っている。Kがこちらを向いて話すのを聞いているのが好きで、私はもしかしたらKを好きなのかもしれない。私がここで黙って帰ってしまったらKは困るだろうし、私を信頼できない不実な奴だと思ってしまうかもしれない。それはいやだ。
アスファルトを張った駐車場の、青い制服の塊に近づいてみると、Kの子分たちはいたがKはいなかった。「ああ、Aさん。Kは探しにいってますよ」Kはまもなく戻ってきて私は内心ほっとした。そして気がゆるんだあまり、爆弾を落とした。
「『オリオン』の看板のうわさ、知ってる?」
Kの頬が少し動いた。平静を装っているが、驚かせたことで暗い満足があった。オリオンはパチンコ店で、私のようないい家の子が近づく場所ではない。そして、オリオンの看板がいつか爆発で壊された件は、ほかならぬKが関わっていると私は知っている。
Kが私には知られたくなかっであろう喧嘩で。
Kに好きになってもらいたい、昔のようにまた学校帰りに手をつないで歩いてほしい。そんな気持ちと裏腹に、なぜ私はKにやさしくできないのだろう。
[了]


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