女の世紀を旅する
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2011年04月23日(土) |
東日本大震災後の世界の話をしよう,サンデル教授が白熱議論 |
東日本大震災後の世界の話をしよう,サンデル教授が白熱議論
2011年4月23日20時
●「東日本大震災は私たちをどう変えるか」と問うマイケル・サンデル教授(4月22日、米ケンブリッジ市)、
東日本大震災後の世界のあり方をめぐって、対話型講座「正義」のテレビ放送や著書が爆発的人気となった米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授(58)が22日、同大の学生主催のシンポジウムで、参加者と議論を交わした。震災で生まれた日本への共感は、国境や文化を超えた共同体意識が芽生えるきっかけになる――そう訴える教授に、参加者はそれぞれの意見をぶつけた。
サンデル教授はまず、日本へのかつてない共感を広げた東日本大震災で、国境や文化を超えて、他者の痛みや喜びを自分のことのように共有する「世界市民」の意識が生まれるだろうかと問いかけた。答えは「共感だけでは変わらない。私たちが他者と持続的なかかわりを築くことができるかにかかっている」。そのためには、他者と開かれた対話を続け、コミュニケーションを深めることが最も重要だと強調した。
「世界市民という考えに感動した」という女性には、自分の支持する政治哲学は「論理と理性」と「共感的理解」を分けるものではなく、双方を含んだものと説明。世界中の人々が共同体の意識を深めるための議論も、感情や情熱と理性を切り離す必要はなく、むしろそれらを反映しながら、公の場で堂々と議論すべきだと提案した。
ある男性は、推定で23万人超が死亡した2010年のハイチ大地震と、28万人以上の死者を出した04年のインド洋大津波に言及し、「東日本大震災よりひどい災害。これらの災害と東日本大震災の間に違いはあるのか」と質問。暗に東日本大震災の「特別扱い」を批判し、「世界市民」意識の発展の可能性にも疑問を呈した。
「災害は災害」と切り出したサンデル教授は、「ただ、それぞれの災害からどういう意味を見いだすかについて、私たちはまだ答えを出せていない。どれだけ多く亡くなったかは答えにならない。どういう答えを出すかは、私たちにかかっている」と慎重に言葉を選んだ。
主催者の1人、ハーバード大4年の久間木(くまき)宏子さん(22)は福島市で生まれ、仙台市で育った。「3月11日からずっと震災ニュースにくぎ付けで、何もできないもどかしさ、悔しさ、申し訳なさの中で過ごしてきた。シンポの成功はハーバード大学全体が応援してくれたから。被災地の状況を気にかけているという皆の思いを届けたかった」と語った。(ケンブリッジ=春日芳晃)
●サンデル教授、東大で白熱授業 正義について熱く討議(2010年8月25日)
サンデル教授は聴衆に次々と問いを発し、「正義」について熱い討議を交わした(東京大本郷キャンパス) 人気の「白熱教室」の日本出前授業が実現した。米ハーバード大で空前の履修者数を誇るマイケル・サンデル教授(57)の来日特別講義が25日、東京大(東京都文京区)で開かれた。身近な題材から問いを投げかける有名な対話型講義に聴衆が積極的に参加し、本家さながらの熱い討議が繰り広げられた。
教授の講義を今春から放映したNHKが教授を招き、東大と共催した。本郷キャンパスの安田講堂には、東大生約300人のほか、10倍の応募から選ばれた一般枠の500人も参加した。講義は同時通訳され、質問や討論には日本語と英語が交じった。
テーマは「Justice(正義)」。教授は教壇の前を縦横に歩き回り、「イチローの年俸は米国の大統領の42倍、日本の教師の平均所得の400倍。これは公正?」と質問。
ある女子学生が「イチローの活躍はチームに支えられてのもの。額が多すぎる」と持論を話すと、教授は「大統領も閣僚やチームがいるよ」と切り返す。女子学生は「野球は娯楽。オバマの仕事の方が重要」と再反論。多額収入者への課税の是非に話が及ぶと、男性が「個人が努力で得たお金を国が再分配するのは権利の侵害」と声を上げた。
戦争責任の話題も盛り上がりを見せた。「日本は東アジアに謝罪すべきか」「オバマ大統領は広島・長崎への原爆投下に責任があるか」との問いには、会場が真っ二つに。「祖父の世代の行為に責任はない」「生まれる場所は選べないのに、謝罪を強制されることには納得がいかない」との発言が飛ぶと、「前の世代を土台にして今の世代がある。当然責任がある」。2時間の予定が1時間半近くオーバーする白熱ぶりだった。
サンデル教授は「日本人はシャイと聞いていたが、本当に真剣なやり取りが交わされ、感動的だった」と話した。 サンデル教授の講義は日本でも今春から「ハーバード白熱教室」と題して連続放映され、大きな反響を呼んだ。講義をまとめた「これからの『正義』の話をしよう」の翻訳本は30万部を超えるベストセラーになっている。今回の特別講義は10月下旬以降にNHK教育テレビで放映予定という。
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