女の世紀を旅する
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2002年09月15日(日) |
東証9000円割れ寸前,崖っぷちの日本経済の処方箋 |
《東証9000円割れ寸前,崖っぷちの日本経済の処方箋》
2002.9.15
★ 不気味ではないか.株価の下落に歯止めがかからないのだ.とうとう19年ぶりの安値に下落し,日本市場は悲鳴をあげている.金融危機やデフレがこのまま進めば,日本経済は破局に至ってしまうだろう.今年の秋,日本経済は最大の試練に直面するものと思われる.
アメリカの株式は今後,6000ドル台に下落すると予測するアナリストもいる.もしそうなれば,日本株もひきずられて,さらに一段の下落もありえることが予想される.アメリカの株価下落はまだ始まったばかりなのに,日本の株価は早くも19年前のレベルまで下落しているということ,これが本当に不気味であり,デフレ経済をさらに加速化させるのでないか.
NYダウ平均(ドル) 8312.69 -66.72 9月14日 NASDAQ(ドル) 1291.40 11.72 日経平均株価 9241円93銭 -173円30銭 9月13日
●緊急にデフレ対策が必要
消息筋によると,9月12日の日米首脳会談においてブッシュ大統領から小泉首相宛てに「親書」が渡されたという。 この中で、ブッシュ大統領は世界同時株安に陥れた今回の日本株下落を「9月危機」と表現しており、不良債権処理を怠り、またしても危機を招いた日本政府の金融行政を 「世界規模の”9月危機”を 再度招いた責任は大きい」と痛烈に批判した、と言われる。
また、この危機再発の背景要因として金融庁の組織にまで言及し、 「検査 局と監督局が同居することが改革的な金融行政の障害になって いる」と述 べ、「不良債権処理を促進するためには米国同様に銀行検査機能を監督行政から引き離すべき」との提案を示した。
この消息筋は「米国政府は金融庁の組織変更とともに今回の 混乱の責任 追及をも示唆した可能性があると感じ取れた」と言う。 昨年3月のブッシュ・森会談後の動き同様、今回もブッシュ大統領直々の Claimを受けたことから、「政府が現在検討中のデフレ対策とは別に、 Claimに直接対応する形 の何らかの施策を講じる可能性が高まった」と考えている。
先週末に政府がまとめたデフレ対策は塩川財務相、速水日銀総裁によって押し返された格好になっているが、「今後数週の間には、不良債権処理と金融市場安定化を最重点課題に据えた、どちらかと言えば 即効性と効力の高い不良債権処理対策、株式市場対策が打ち出される公算が強まった」と言う。
●政府の市場軽視,無知の先に見え始めた「市場の死」
住信基礎研究所・主席研究員の伊藤洋一氏は、最近の東京株式市場の出来高の減少には「新証券税制不安」があるとの見方がもっぱらだとして、こう語る。「株価が下がっても、買いが入らなければ株価は下がる。下がればもっと誰も投資しない。待っているのは、そしてすでにその醜い顔を出し始めたのは『市場の死』だ」
ではなぜ、「出来高」さえ出てこないのか。伊藤洋一氏は、「株式への投資がやりにくい環境が着々と作られているからだ」と指摘する。 その半面で、無税化など国債購入の容易さは進められている。経済の持続的な富を生み出すのは民間の経済活動であるにも拘わらず、「資金が民間ではなく国庫に流 れるシステムが作られつつある」と言う。
新証券税制の運用見直しを検討するとの報道があるが、「問題は、なぜこんなことが最初から分からなかったか、だ」と言う。多くの市場関係者はこう考えている。「制度を作った人間が市場を分かっていないのだから・・・」と。「私もそう思う」と、伊藤氏。「巨大な官僚組織に全く居ないというわけではない。居ることは居るのだが、その割合が小さいし、官僚組織のなかで『市場』というものを育む考え方が主流になっていないからだ」
しかし、「市場の死」は、取りも直さず「日本経済の死」の前兆かもしれない。株価が9000円を割った先週、市場関係者として伊藤氏が一番感じたことは、「日本の経済や市場から失われた弾性(elasticity)」だと言う。あって当然と思う反発力が市場にまったくない。9000円割れても意外感がなく、一種のあきらめの空気が漂っている。
「まるで日本では経済も市場も『脚気(かっけ)』になったようだ」。脚気のような経済や市場を引きずることは、「活力なき経済」を意味する。「それは大多数の国民にとって貧困化を意味する。弾性とは、すなわち活力、反発する力を意味する。それがなければ、経済が落ち込み始めたときに歯止めがきかなくなる。それも、多くの国民が望むことではないだろう」。今の日本市場からは反発力どころか、「市場らしさ」さえ消えていると言う。「あの毎日の少ない出来高にこそ驚愕し、脅威と感じるべきだ」。
そして、こう締め括る。「願わくば、富を生み出す市場や民間経済のワーキングを妨害しないシステムを早急に組み立てて欲しいものだ。容喙(ようかい)より、できうる限り自由な市場のワーキングを守り、育むことの方が、よほど経済を強くできると思う。未だにこんな議論をしているのは、時宜を逸した気もするが、それでもやらないよりましだ」と。
米同時多発テロから満1年を目前にして日米欧の主要株式市場で連鎖的な株安が進んでいる。世界経済の牽引(けんいん)役だった米国経済の失速懸念が、各地でリスクマネーの逃避を促しているからだ。とくに、不良債権の重荷を抱え、デフレの進行が止まらない日本経済にとって、世界同時株安は致命傷にもなりかねない。
●不良債権、抜本処理急げ (小林陽太郎氏)
――急激な世界的株安です。どう見ますか。
「同じ株安でも日米で事情は違う。昨年の同時多発テロに続き、エンロン、ワールドコムなどの会計不信から最終的な歯止めである監査法人の信頼まで揺らいだ米国は、強い危機感から早い段階で罰則強化などの信頼回復策を打った。今回の株安は米企業の景況自体よりも、イラク攻撃が浮上してきたことへの欧州の批判やアラブ諸国の反応など外交、政治リスクが大きい」
「だが、日本の場合は経済構造改革が進んでいないことが最大の問題だ。特に金融部門の不良債権問題が解決していないどころか、ペイオフ論議では政府、企業とも問題に正面から取り組む姿勢を見せず、市場に心配が広がった。深刻な緊急事態だ」
――その日本でも、実質国内総生産(GDP)などの経済指標には回復感も出ていますが。
「足元の統計と違い、株式市場は半年先、1年先を見て動く。突き詰めて考えれば、金融システム不安が残っていることが株安を招いている。3月危機への懸念は株の空売り規制で乗り切ったが、同時にその買い戻しも減る結果となったわけで、市場のゆがみが取引高の縮小というしっぺがえしも招いている」
――どう対応すべきでしょうか。
「一気に数十兆円規模の公的資金を投入し、不良債権を抜本的に処理する必要がある。内外からのシステム不安を一掃するという覚悟を小泉首相に持ってもらいたい」
「抜本処理によって、いま金融機関が失っているリスク引き受け能力を回復させる。その際、元気な中小企業への融資は必要だが、中小企業向け融資を一律に聖域化して目標を定めるような考えは排除し、金融機関の意思を尊重すべきだ」
――不良債権処理では、企業の破綻(はたん)による雇用不安なども出ますね。
「もちろん一時的な痛みは伴うが、一気に処理を進められれば、海外の事例から類推すれば半年から1年で前向きの結果が出るだろう」
――東京電力、三井物産など大企業の不祥事も影を投げかけています。
「『この程度の傷を公表したら無用な不安を招く』という心理が働いたのだろうが、この際、反響も覚悟してすべて開示する姿勢が大事だ。取締役会や監査役会によるチェックにとどまらない、広い意味でのガバナンスを強化するためには、内部告発を是とするような仕組みも必要だ」
●米国景気、二番底の恐れ (高尾義一氏)
――なぜ、今、世界同時株安なのでしょう。
「米国は00〜01年に、ハイテクを中心にした企業部門の株価が下落したが、10年近く続いた設備投資ブームが、その程度の株価の調整で終わるはずがない。減税や利下げによるカンフル剤的効果が薄れた今春には2回目の調整に入った。米大手で不正会計問題が続出し、相場の下げ足を強めた。今まで隠されてきた様々な問題が、下落でもう糊塗(こと)できなくなってきた表れだ。こうした動きは米国景気が二番底をつける可能性が高いというメッセージと私は見ている」
「日本は今年に入り、輸出主導で景気回復すると言われたが、その認識を修正する必要がある。通関統計や鉱工業生産などの指数が弱くなっているからだ。景気後退はまだ続いており、輸出で一時的に持ち直しただけという解釈も可能だ。加えて、デフレの傾向も強まっているし、株の持ち合い解消圧力も根強い」
――米経済を中心に、調整はまだ続くと。
「バブルができあがる過程で、米国企業の負債は大きくなった。ハイテクや情報通信以外の企業のバランスシート調整はこれからだ。消費を支えてきた家計部門も大丈夫なのか、との見方も強まっている。日本のバブル崩壊過程と同じだ。10月にかけて、一段の相場の下落もありうる」
――各国の当局はどんな対応が可能ですか。
「現状の米財政は所得を直接増やすような減税がしにくい。米連邦準備制度理事会(FRB)は、株式や財務省証券、金の買い上げまでも検討したと報じられており、こうした通常でない政策に向かう可能性はゼロではない。欧州は、もともと機敏に政策対応できる仕組みではない。財政赤字の規模に制約が設けられているし、欧州中央銀行(ECB)は政策対応の自由度が小さそうで、生やさしい状況ではない」
――小泉政権は、不良債権問題など金融から、道路公団や郵政改革に軸足を移しています。
「構造改革を重要視するのは分かるが、長期低迷が続く中、政策の優先順位で一番高いのは不良債権処理だ。銀行検査を徹底的に厳しくし、自己資本や引当金が本当に十分かどうか、市場の信頼に足るような、情報公開をする必要がある。当局の国民向け発表と、実体経済のズレが覆い隠せなくなってきている。9000円割れは市場からの政策への愛想づかし、金融システム不安への警告と受け止めるべきだ」
●上限決めてインフレに (学習院大教授・岩田規久男氏)
――株価下落の要因はなんでしょう。
「物価や資産価格(株、土地)が持続的に下落するデフレが続いているからで、マスコミが指摘する銀行の不良債権処理の遅れが原因というのは誤解だ。不良債権処理というのは銀行が融資の貸しはがしをやり、企業をつぶすことを意味する。その結果、デフレが一段と進み、不良債権がまた生まれる。日銀が大胆な金融政策に転換し、主因のデフレを止めるしかない」
――金融は大幅に緩和され、実質ゼロ金利です。
「まだ、不十分だ。今後1年以内で1〜3%物価を上昇させるインフレターゲットを導入すべきだ。その達成に向けて日銀が銀行から長期国債をどんどん購入し、金融市場に資金を潤沢に供給したらいい。外債も購入し、円安効果を狙うことも必要だ」
――そうはいっても、インフレにするのは簡単ではないでしょう。
「日銀の市場への資金供給が増大すれば、株、外債投資にも資金が回り、ひいては不動産にも回っていく。この結果、資産価格が上昇し、将来はインフレになるという期待が醸成される。企業は株高などで保有する資産の価格が上がれば、新たな投資意欲が生まれるし、銀行にとっては、その企業が魅力ある投融資先となるなど、プラス面が広がっていく」
――野放図な国債購入は財政のゆるみを招きます。
「しかし、今は国債発行残高30兆円という小泉政権の枠がある。日銀がデフレ対策に取り組んでいる間、国債の大量発行はやらないという合意を政府と取りつければいい。日銀が銀行保有の国債を全部買い取るぐらいの勢いでやらないと、インフレへの期待感が生まれない」
――インフレは被害も大きく、うまいように制御できるのでしょうか。
「反対の人たちはマイナス面の極論を言う。だから、インフレ率の上限を設定することで被害を抑え込めばいい。現状は過剰な雇用と設備を抱え、供給が需要を大幅に上回っているのだから、高いインフレにはならない」
「諸外国の中央銀行は2、3%のインフレ目標を掲げているが、問題は起こっていない。日銀は金融緩和を消費者物価が0%以上になるまで続けると言うが、目標時期がなく、政策責任があいまいだ。デフレが依然として進行する中では、現状程度の金融緩和策を持続することは焼け石に水だ」
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