観能雑感
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2007年04月28日(土) 第一回 三聲会 

第一回 三聲会 十四世喜多六平太記念能楽堂 PM2:00〜

 馬野正基、竹市学、山本則孝、山本泰太郎の4名による新しい同人が発足し、その第一回目の会。藤田流の獅子が聴きたくて(映像を通して聴いたことはある)足を運ぶ。
 白さが鮮やかな新しい板が張られた舞台を前に、この板が以前のもののように使い込まれていくまでに、世界は、日本は、そして能はどうなっているのかを思うと、決して楽観的にはなれない。
 白泉社から花が届いており、パンフレットの最終ページは全面が同社の雑誌広告。ほぼ満席の見所には成田美名子氏本人の姿も。中正面後列脇正面寄りに着席。

舞囃子
『高砂』八段之舞  観世 銕之丞
笛 藤田 六郎兵衛(藤) 小鼓 大倉 源次郎(大) 大鼓 柿原 崇志(高) 太鼓 観世 元伯(観)

 何故か爽快感に乏しい神舞だった。

狂言 『縄綯』
シテ 山本 泰太郎
アド 山本 則直、山本 東次郎

 以前則直師がシテで本曲を観たことがある。いろいろ見劣りするのは致し方ないとして、縄を綯うという、現代人であるならば無縁であるという点では同じこの行為を、則直師はごく自然に演じていたのに対し、泰太郎師には違和感を感じたのは何ゆえなのか。全体的に余裕の無さが前面に出ていて少々辛かった。懸命であるのは当然、それ以上の成果を出してこそのプロである。期待できる人に対してだからこその苦言。

能 『望月』
シテ 馬野 正基
シテツレ 小早川 修
子方 小早川 康充
ワキ 舘田 善博
アイ 山本 則孝
笛 竹市 学(藤) 小鼓 大倉 源次郎(大) 大鼓 柿原 崇志(高) 太鼓 観世 元伯(観)
地頭 野村 四郎

 シテの直垂は桃色地に黒の雲紋という変ったもの。能としては写実的で劇的な展開が相次ぐ曲の筈なのに、妙に淡々と進行。仇討の緊張感も感じられなかった。
 獅子の囃子はこれまで聴いた中で一番大人しかったように思う。ヒュイタルラーのラーの部分がトリルになるのが面白い。
 竹市師の笛を聴くのは数年振り。驚きの上体の揺れはなくなったが、かなり前傾姿勢。控えている時の顔に落ち着きがなくて気になった。改めて聴いて見ると師である六郎兵衛師の音にやはり似ている。今後に期待が持てる方なのでぜひ弛まず精進していってもらいたい。

 新しい会の発足にもかかわらず、勢いや熱意のようなものが感じられなかったのは何故だろう。

 相変らず開演後の途中入場が後を絶たず。ロビーからは子供の騒ぐ声が聞こえてきた。奇しくもこの日に届いた「新・能楽ジャーナル」に石井倫子氏による見所のマナーに関する寄稿があり、現状を的確に指摘していて至極納得。ただ能楽堂ではキレる観客を見たことがないという一点には異論があるが。主催者側はせめて途中入場者の管理くらいは着手すべきだと思う。


こぎつね丸