いちばん悲しい仕事 - 2005年08月25日(木) 私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、 悪くて有害と知る方法を決してとらない。 頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない。 同様に婦人を流産に導く道具を与えない。 『ヒポクラテスの誓い(原文:小川鼎三訳)』より 病院が比較的”都市部”と言えるところにある故か。 はたまた、時期的にそういうシーズンなのか。 とみに人工妊娠中絶の手術件数が多い気がする今日この頃。 言うまでもなく、医師として行うのが最も辛い手術でしょう。 I産婦人科部長は、胎盤鉗子で子宮の中の胎児を挟んだ感触があると 悲しそうに、深い深いため息をひとつ吐きます。 あの手術は、目視下に行うわけではありません。 ゾンデという、細い棒のような器械を使って、子宮の深さを測り、それを目安に手探りで中身を挟んだり掻き出したりするわけです。 妊娠中の子宮というのは豆腐のように柔らかいので、細心の注意を払っても、何年かに一回は穿孔の事故が起こります。 手術が成功しても、子宮の中の傷跡が癒着してしまうAsherman症候群となって、その後、不妊に苦しむかもしれません。 簡単なようでありながら、リスクが確実に伴います。 それ以上に罪悪感も強く、術後しばらくはスタッフも落ち込みます。 仕事ですから、患者さんには悟られないよう努力しますが・・・。
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