時々管理日誌
時々だけ書く管理人の日誌です。
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2004年05月03日(月) 企画参加&ファンタジーの境界線

相互リンク先 ruhe storerの田島光記さんが主催している競作企画 『365ALIVE』に参加しました。
日記CGIを使って、一年365日、現実世界の普通の日常を描いた短編をみんなで投稿する企画です。

実は、企画開始前に一度声をかけていただいていたのですが、その時は、参加したい気持ちは山々だけど自分に非ファンタジーが書けるかどうか、また、日記CGIに投稿できるような掌編が書けるかどうか自信がなくて、『とりあえず保留で、後で何か書けたら参加させてもらいに行く』と返事をしてあったのでした。
(『異世界やファンタジー色が強いものは不可』という規定なのです。)

で、ずっと、発動した企画をROMりつつ、やっぱり参加したいなあと思っていろいろ考えているうちに、中学生の頃に考えてあったネタで何とか使えそうなものを思い出し、書いてみたら、一応、そんなに長くならずに書けたので、参加させてもらったのでした。

ちなみに、投稿した作品は、たいしたものではありません(^^ゞ
何しろ中坊時代のネタだし、ほとんどぶっつけ本番的な一発書きだし。
もし読んでみてくださろうという奇特な方がいらっしゃいましたら、4月29日付けのものが私の作品です。この企画、作品にタイトルはつけないのです。

でも、これ、自分の基準では決してファンタジーではないつもりなのですが、『ファンタジー色が強い』かどうかと言われれば、ちょっと微妙だと思うのです。

ここから、ファンタジーと非ファンタジーの境界についての自分の考えを書くために、この掌編の内容を完全にラストまで明かしてしまうので、もし作品を読んでやろうという方でネタバレが嫌いな方は、この日記のここから下は先に読まないでください。


-----------以下、投稿掌編ネタバレ----------


その掌編がどういう内容かというと、『猫が飼いたいけど飼わせてもらえない12歳の女の子が、空想の中で、自分にしか見えない猫を飼う。その猫は宇宙から来たエスパー猫で人間の言葉をしゃべるという設定で、少女の、空想上の秘密の友達の役割を果たすが、やがて、少女に地球侵略への協力を要請するようになる。怖くなった少女は、その空想との決別を決意し、猫が病気で死んだことにして、空っぽの墓を作るが、猫は生き返ってしまう。しかたなく、今度は、空想の中で、自分の手で猫を絞め殺し、再び墓を作る』という内容です。

こういうストーリーなので、最初のほうでは、まるでSFのような内容が描かれますが、猫が宇宙人だったり人間の言葉をしゃべったり墓から蘇えったりするのはすべて女の子の空想に過ぎず、現実には、不思議なこと、非現実的なことは何一つ起こっていないのです。そのことは、ちゃんと、作品の中で明記されます。
だから、私の考えでは、これは、ファンタジーでもSFでもないのです。もしかすると、サイコ系ホラーではあるかもしれませんが。

でも、中学生の頃に考えた(でも形にすることは出来なかった)元のお話は、ほんのちょっとの差で、ファンタジー・幻想小説だったかもしれません。

ストーリーは、ほぼ同じなのです。ほぼ、中学生のときに考えた、そのまま。
ネズミモチの匂いが準主役なのも原案通り。
違うのは、ただ一点だけ。
今回書いた物語の中では、猫は二回死んで、一回目には『猫には九つの命があるのよ』と嘯いて蘇えりますが、二回目には、もう生き返りません。最後は少女が自分の空想を卒業して終わりというように、きれいにまとめてしまってあります。

でも、中学生時代の原案では、一回目に病気で死んだことにしたときは少女が部屋に戻ると何事もなかったように猫がいて、二回目、ナイフで殺した(完成作品中では絞め殺しているが、原案では『ナイフで惨殺』だった!)に、少女が墓から立ち去った後の闇の中で『猫には九つの命が云々……』『私たちはまたいつかめぐり合うのよ』というような猫のセリフが聞こえるというシーンがあったのです。少女はそれを聞きません。聞くのは『読み手』だけ。

つまり、そこでは、猫を、少女の空想の産物の範疇を越えた、実際に存在する怪異として描いてしまっているのです。物語の中で、実際に怪異が起こってしまっているわけです。
だから、そのワンシーンがあることで、原案はホラー・ファンタジーだったと思います。

その、『誰もいなくなった舞台に流れる猫のセリフ』というラストシーンをカットしたことで、このお話はファンタジーではなくなった、と、私は思っています。

それが成功なのかどうか、よくわからないのですが、とりあえず、原案通りだったら、明らかにファンタジーであり非現実の物語になってしまうので、この企画には参加できなかったと思います。
もし、ホラーとして書くつもりなら、原案通りに書いたほうが、不条理な余韻があって怖かっただろうとは思いますが、怖いものを書きたいと思って書いたのではないし。

では何が書きたかったのかというと自分でもいまいち不明ですが(^_^;)、たぶん、今も昔も、ネズミモチの妖しくも不快な匂いが掻き立てる春の闇についての妄想と、少女の『卒業』を書きたかったんだと思います。少女が空想のお友達と別れて現実の日常を選ぶ、という、ひとつの『卒業』を。

その手のテーマ(『子供時代の終わり』とか『現実世界で生きることを選択すること』とか)って、『イルファーラン物語』にも、やはり中学生時代の作品である『銀河鉄道途中下車』にも、わけあってネットで公開出来ない中編『金の光月の旅人』にも共通するもので、どうやら、今も昔も私が知らず知らずのうちに書かずにはいられない、私の、30年来の((^^ゞ)『持ちテーマ』らしいです。
『森の花嫁』は同じテーマの裏返しだし、他に構想中の作品、未完の作品なども、だいたいみんなそのテーマを含んでいるみたいな気がします。

ちなみに、『湿った春の闇に満ちる花の匂い』というのは、『イルファーラン物語』の次に公開する場面にも出てきますが、これも、この、中学生時代のネタからイメージだけを流用したものだったのでした。
『イルファーラン物語』を書いた頃は、そのネタをそのまま使うことはもう無いだろうと思ってたので……。

もう使えないと思っていた中学生の頃のネタを今更持ち出すことが出来たのは、企画に参加する気になったおかげですね。
あの企画が無ければ、あのネタは、一生日の目を見ることはなかったでしょう。

というわけで、すごく長い日記になりました。
これが掌編の後書きだとすると、本編より後書きのほうが長いですね(^_^;)


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