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■ ジョナサン・キャロルを読む
「翻訳物は原題に注意しなくてはならない」 昨日の夕刊記事でつくずく思い知ったあたしではある。
さて、ジョナサン・キャロル『死者の書』を読み終わった。 本作を始め、彼の作品はいわゆる"ホラー"に分類されるそうだが、どちらかといえば"ダークファンタジー"に近い印象を受ける。
教師の仕事に嫌気の差した主人公は、恋人とともに敬愛する天才作家の伝記を書くことを決心し、作家の娘の住む片田舎を訪ねる。首尾よく娘の許可を取り付け執筆に入るのだが、町の住人は作家も互いのことも"町で起こったこと"にもとても詳しかった。それは異常なほどに……。
児童文学における天才作家マーシャル・フランスの作品や登場人物がふんだんに盛り込まれているので、てっきり実在の作家かと勘違いしてしまう。そこがこの作品のひとつの狙いであることに、最後になって気付く。 実際233ページの終わり2行では、文庫を二つに裂いてゴミ箱に突っ込もうかと思ったが、最近更年期障害の走りか判断が極端に鈍りがちなので踏み止まった。人より少ないデイ・ヘッドが黄昏に向かって旅を始めたなんて、どっかの元大統領みたく気取っていられないのだ。
話がズレたが、とにかく5分の3を過ぎた段階で「取り返しのつかない人生に抗う最悪の方法」がこの世にあることを読者はおぼろげに知る。 『死者の書』なんていうから、つい折口信夫を思い出してしまうが、原題は『THE LAND OF LAUGHS』――「笑いの郷」かよ! これこそが主人公の最も愛したフランスの代表作なのだった、やられた!
これ以上の最悪は人智を越えるかと思しきラストだが、次作は更に上回る不気味さだそうだ。困った、もう週末なのに渋谷まで出ないと買えない。どういうわけだかキャロル作品、滅多に書店でお目にかかれないのである。
2006年02月23日(木)
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