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■ パリ三景
年末からパリ及びフランスに関する本を三冊続けて読みました。学術的ではなく、異邦人の目に映る風景を切り取ったような内容です。
■稲葉宏爾『路上観察で歩くパリ』(角川oneテーマ21) 豊富なカラー写真とともに、パリの街並みにある様々な不思議を紹介してあります。一見してなんだか分からない置物、車止め、無用のひさし……時代の趨勢で意味を失ってしまったものも多いようです。 19世紀なかば皇帝ナポレオン三世の号令のもと、古く不潔で悪事のはびこる複雑に入り組んだ建物が一掃され、パリは近代的な街並みに生まれ変わりました。その結果通りのあちこちに鋭角が発生し、三角形の建物が多くなったんだそうです。玄関にかざってあるパリの街並みを模した陶器の置物も角地は三角形になっていて、そういう理由だったのね、と妙に納得がいきました。
■堀江敏幸『もののはずみ』(角川書店) 書評で"女性に人気のあるエッセイ"と紹介されていた本。作者がパリ滞在中に集めた雑貨やガジェット――それはお菓子の空き缶だったり古びたスーツケースだったり、あまり実用にかなってはいませんが――を、美しい文体の魔法であっというまに魅力的なタカラモノへと変貌させてしまいます。ものをとおして折々の記憶を呼び覚ますといったプルースト的帰納法は、パリだからこそ自然でオシャレなのかもしれません。
■池澤夏樹『異国の客』(集英社) 去年翻訳権が切れ、あちこちから新訳の出た『星の王子様』ですが、池澤さんも翻訳したおひとりです。彼の文章も大好きで特に『マシアス・ギリの失脚』は圧巻でした。読者に多種多様なパースペクティブを提供できる才能は、お父さんの福永武彦ゆずりかも。 2005年10月現在、フランス在住14ヶ月になるそうです。自ら「異国の客」という身分を好み、知らないからこそできる発見に邁進中(笑)。インテリジェンスの高い文章が堪能できます。
2006年01月16日(月)
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