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■ メタルもパンクも彼岸まで
かつん。
自動ドアが開くと同時に、棋院1Fロビーに金属的な音が響く。
かつんかつんかつん……かっかっかっかっ。
エレベーター前で止まる。 まわりが一斉に引く中、意を決した和谷が(好奇心に負けたとも言えるが)声をかけた。
「進藤、オマエそのカッコ……」
「……今日一日これで過ごせと言われた」
上下真っ黒のレザースーツ。 両袖の付け根は大胆にカットされ、中のタンクトップはヘソが見えるほどに短い。 ボトムは腰穿きギリギリで――要するにあちこち素肌チラリズムのファッションは渋谷ならともかく、市ヶ谷では浮きに浮いていた。
「これでもじゃらじゃらのチェーンは全部取っ払ったんだ。碁盤に当たってうるさいからな」
賢明な判断と言えよう。
「オマエ今日の手合い誰だったっけ?」
「……塔矢」
よりによってかよ。
「それもしかして、彼女のプレゼント?」
むっつり押し黙ったままのところを見ると正解らしい。 とりあえず写メールを構える。 確かにこれは一大スクープだ――天野さんに送っとこうか。 和谷は思わず天井を見上げた、そのとき。
「何をしてるんだ進藤、箱が降りてるじゃないか」
言うなり、塔矢が足早にエレベーターに乗り込んだ。 開ボタンを押したまま、動じる様子もなくヒカルを促す。 ふたり並んでドアが閉まるまで、誰も二の句が継げない。
「すっげービジュアル……;」
あのままライブハウス行きでも違和感ねーじゃん。 こりゃ今日の結果が見物だぜ。 おっと、独り占めはもったいないし、グループ送信してやれ。 今日はハッピーバースデイ、全員レスは進藤に返しとけよ。
和谷はそっとほくそえみ、次のエレベーターに乗り込んだ。
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あっちもこっちも、何を聴きながらかいたかバレバレだったり; この頃会うこともめっきり少なくなっちゃったけど、あたしのホームベースはいつまでもキミだからね。
お誕生日おめでとう、ヒカル!!
2005年09月20日(火)
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