日日雑記
emi



 ストラディ1716

1716年製に名器が多いとは聞いておりましたが、この度千住真理子ちゃんの手にそのひとつが渡ったというのは初耳でした。
確か彼女は今まで1720年製を使っていたと記憶しています。

昨日のNHKニュース10でその幻の名器が初披露されました。なんでも最初の持ち主は時のローマ法王で、その後フランス貴族からスイスの富豪のコレクションとなり、今回オークションにかけるよりこの楽器にふさわしい著名なヴァイオリニストに譲ろうというバイザーの話し合いで、真理子ちゃんに白羽の矢が立ったそうです。

彼女は初めて楽器に触った瞬間からもうなにかを奏でているような感覚にとらわれ、またその理想的な音色の虜になったとか。でもこれまでの遍歴は最近まで知らず「一目惚れでおつきあいが始まった彼が、実は王子様だったという気分です」と笑っていました。

ヴァイオリニストにとって楽器は命です。そして名器と謳われるものは必ずその価値があり「弘法、筆を選ばず」の論理はヴァイオリンに限っては成立しません。
ですからどんな代償を払ってでも名器を手に入れるのがヴァイオリニスト、特にソリストにとっての一生の命題と申せましょう。まさに「悪魔のヴァイオリン」です。

しかしヴァイオリニストの誰も彼もが資産家であろうはずもなく、現在は国からの貸与、あるいはコンサート優勝のご褒美として期間限定の楽器貸与といった方式がとられています。またコレクターと契約したり、パトロン(日本的な陰湿な意味合いとは全く違う)がいたりといろいろです。
あたしが以前習っていた先生の楽器は「都心にちょっとしたマンションが買えるくらいのお値段」とのお話でした。弾くためのボウも加算するとおそらく4000〜5000万くらいかと思います。もう弾いた瞬間から音が語り出すようでした。

昨夜はその「王子様」の音色を楽しんだ後、高円宮様薨去のニュースが入りました。
オシャレで気さくで芸術に造詣の深かった宮様を、お好きだったというモーツァルト「ツァイーデ」のアリアを聴きながら忍びました。

2002年11月22日(金)
初日 最新 目次 HOME


My追加