ムッキーの初老日記
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同じ事を聞いたり言われたりしても その言った人に好意を持っているかどうかで、かなり感じ方が変わるものだ。 白い紙に印刷された言葉を「見る」のと違うのは、その点だ。
例えば私の場合。 チーちゃまが言って「ああいい事言うな」と思ったそれとそっくり同じ事を 出川哲郎が言ったらどうか。
人の口から出る『言葉』は、本当に不思議である。
大昔の話。私は職場の先輩に憧れの君がいた。名前は I さん。 I さんは見てくれは・・・よくなかった。確かに・・・それは認める。
だが私好みのあっさり顔で、しかも私好みの語る男であったので 私はあの頃の一時期、本当に彼に傾倒していたものだ。
今、初老の私が当時26歳前後だった彼の話を聞いたら、きっと 「なに言っちゃってんだろうね、この小僧が。」 と思うだろう。だが18歳の私にとって、彼の話は一種の麻薬だった。
ある日のこと。 あれはビアガーデンだったかビアホールだったか居酒屋だったか その辺の記憶はもう曖昧なのだが、私と I さんと職場の仲間7、8人で飲みに行った。
I さんは飲むほどに舌が滑らかになり、その日もなんだかいい話を始めた。 私は、彼の話を一言たりとも聞き逃すまいと 平静を装いつつも、とても真剣に彼の話を聞いていた。
私も多少飲んでいたので(いくつだったかは聞かないように) 心の振れ幅がいつもより大きくなっていたのであろう、 彼の話に、それはそれは深く感動してしまったのだ。
なんていい事言うんだろう! なんて素晴らしい人なんだろう! もう感激の大爆発、感情の大噴火である。
飲み会がお開きになり、幹事たちが会計してる間 女子社員は先に表に出たのだが、その時、涙ぐんでる私を発見したのが その場に居合わせた、現・湖畔の恋人、元・同僚のカオリである。
カオリは、目を潤ませた私を見ると驚いて聞いてきた
「どうしたの?なに泣いてんの?気持ち悪いの?」
「カオリ~、私 I さんのこと好きでよかったなぁ~(T□T)」
「は?何?何言ってんの急に!?」
「さっきの話~、すごいよねえ、素晴らしい人だよね~。 あたしゃ I さんに惚れた自分を褒めてやりたいよ~。」
「え!?あんた、もしかして感激して泣いてんの!? さっきの話に!?マジで!?ウソだろっ! ∑( ̄▽ ̄)」
カオリは、変わった生き物を見るような目つきで私を見つめた。
「ええ?カオリは感動しなかったの!?ウソだろっ!( ゚Д゚)」
我々はしばし気まずい思いで見つめ合った。 (; ̄_ ̄)・・・(・д・` )・・・
I さんを大好きだった私は泣くほど感動し I さんを何とも思ってなかったカオリは「また語ってる」としか感じなかったのである。
どっちが正しかったのか。
あれだけ感動して涙を流した私であるが、今となっては 一体どんな話であったのか、その断片すらも思い出すことが出来ない。
つまり、そういう事なのである。 若いって恥ずかしい。
でも、憧れの人の酒の席での話に感動して泣いた 純だった自分は、嫌いじゃない。 今でも、あの頃の自分を思い出すと、胸がぽうっと温かくなる。 私の小さな思い出である。
+・+・+オッ○ン君のメロディー+・+・+
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ムッキー
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