ムッキーの初老日記
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「久しぶりだな、オマエ元気だったのか。」
あの人が聞く。
「元気ですよ。それよりそっちは全然変わってませんね。」
私は微笑む。
「そう見えるか。いや実際は結構変わったぞ。 あ、なあ時間あるか?少し歩くか。」
「いいですよ。」
他愛もない話をしながら、二人で街を歩く。
途中、アクセサリーを売っている店に立ち寄る。 あの人はブレスレットを1本、ひょいとつまんで私に渡す。
「これ、似合いそうだ。ちょっと付けてみろよ。」
クリスタルのようなパールのような、淡い白い輝きを放つ小さな石を 細い金の鎖でつないだ、華奢で美しいブレスレット。
私みたいに大柄の女には、こんな細いのは似合わないのに そんなことには本当に疎いんですね。
薦められるままにそれを手首に巻きつけてみる。 ほら、やっぱり全然似合わない。
「お、いいじゃん。やっぱりよく似合うよ。」
「・・・そうかな。じゃあこれ、買おうかな。」
「何言ってんだよ、今日の記念に俺がプレゼントするよ。」
「え、いいですよ。私自分で買います。」
「バーカ、遠慮すんじゃないよ。すいません、これ下さい。 付けて行くから包まなくていいよ。いくら?・・・え?」
ブレスレットは、980円だった。
「なんだよ、そんなに安いのかよ!」
「ホントに。こんなに綺麗なのにね。」
二人でゲラゲラと笑う。
値段なんか関係ない。 似合うと言ってくれたら、それは宝物。
私の右手をとって、ブレスレットをまじまじと見て
「うん、すごく似合うな。」
もう一度、あの人が言う。
その時、不意に目が覚めた。
私は暗がりの中、そっと自分の右手を確認したけれど そこにはもちろん、ブレスレットはなかった。
なかったけど、あるような気がした。
まだぬくもりが、あるような気がした。
夢だけど、逢えて嬉しかった。 ふさふさと髪が風になびいていた、あの人に。
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ムッキー
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