ムッキーの初老日記
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2003年12月30日(火) 憎めない男

デパート時代。
同じ売り場の男子社員、根本(仮名)チーフは
私よりちょうど10歳年上で当時29歳。

すごい大人に思えたが、今思い返すと
子供のような人であった。
お調子者で極楽トンボで世渡り上手。


だが、性格が人懐こかった上に
みてくれがとっても良かったので
みんなに好かれていた。

風貌は若い頃の定岡みたいな感じで
ピンクのBDのシャツにチェック柄のパンツなどを
さらっと合わせるおしゃれさんであった。
全く恋愛感情はなかったが、本当にカッコいいので

「根本さんって、カッコいいですよねぇ。」

と売り場の先輩に言うと、彼女は

「いやーもうピークは過ぎたね。」とシビアに言い放った。

「ええ!そうですか!?」

「今から2,3年前はもっとカッコよかったよ。
なにせ隣のデパートにファン倶楽部があったほどだからねぇ。」

「え!( ̄□ ̄;)マジっすか!」


あながち嘘とは思えないほど、(実際事実だったらしい)
「ピークは過ぎた」とはいえ、根本さんはカッコよかった。



ある日、売り場で問題発生。
至急根本チーフの指示をあおがねばならない事態に。
だが彼はどこにもいない!
あちこち内線電話で探したが
社員食堂にも事務所にも倉庫にもいない。
店内放送で呼び出してみても、なしの礫である。

「どこ行ったんだ根本ーー!」

みんなが途方に暮れた、まさにその時
向こうから根本チーフが大慌てで走ってくるのが見えた。

「根本さん!どこ行ってたんですかっ!」

非難轟々、殺気立つ我々に彼はこう言い放った


ゴ、ゴメン!う〇こしてたんだよぅ!


Σ( ̄▽ ̄)Σ( ̄▽ ̄)Σ( ̄▽ ̄)


・・・憎めない。


ある日の残業中。
残業は長引き、みんな腹が減って士気が下がっていた。
この日、何故か根本チーフは飴を一袋隠し持っており
みんなでコッソリなめよう!と言うことになった。
口をなるべく動かさなければ大丈夫。
彼はみんなに一粒づつ飴を配ってくれた。

「こっそりなめろよ♪」

そして皆で飴をなめながら残業を続けていたが
ある社員が「もご」っと頬を動かした所を
運悪く係長に見つかり

「何食ってんだー!」と怒鳴られた。

何も、営業中になめてた訳じゃなし。
残業中に飴の一粒や二粒なめたからって
そんなに青筋立てて怒らなくてもいいじゃないか!

だがこの時の係長は、融通の利かないやつだったので
全員一列に並ばされ、大説教を喰らったのであった。

「お前ら!仕事中に飴をなめるとはどういうことだ!
今飴をなめてるヤツは、手を上げてみろ!」

ばらばらっと挙手する女子社員たち。
その中に混じって、うなだれて手を上げる根本チーフ。

「根本、オマエまで何やってるんだ!」怒りまくる係長。


すいません、それ、俺の飴なんです |д・)ビクビク


な、なんだと!?

口ごもる係長。・・・憎めない。





色々と楽しい思い出が多い根本チーフ。
最後に逢ったのはもう10年以上前になるだろうか。
駅のそばで偶然ばったりと再会した。

「あれ!根本さん!?」

「おお!ムッキーじゃないか!久しぶり。
なんだよオマエ、ちょっと太ったんじゃないか〜!?」

人の肥満を見て嬉しそうにムフフと笑う根本チーフ。


何言ってんですか、人のこと言えるんですか?



そう・・・。昔あれだけカッコよくて
「ミスター〇〇百貨店」の名を欲しいままにした根本チーフは
人のことは言えないほど中年太りあそばしていた。

くりくりっと目が大きい、可愛かったベイビーフェイスも今は昔。
見事な中年のオッサンになっていたのであった。


「あれっやっぱりそう思う?やだよな〜お互い年取るのは。」

「お互いって言わないでくださいよ。」


そういって笑いあった笑顔の中に
昔のままの根本チーフが見え隠れしていた。





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