ムッキーの初老日記
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デパート時代。 同じ売り場の男子社員、根本(仮名)チーフは 私よりちょうど10歳年上で当時29歳。
すごい大人に思えたが、今思い返すと 子供のような人であった。 お調子者で極楽トンボで世渡り上手。
だが、性格が人懐こかった上に みてくれがとっても良かったので みんなに好かれていた。
風貌は若い頃の定岡みたいな感じで ピンクのBDのシャツにチェック柄のパンツなどを さらっと合わせるおしゃれさんであった。 全く恋愛感情はなかったが、本当にカッコいいので
「根本さんって、カッコいいですよねぇ。」
と売り場の先輩に言うと、彼女は
「いやーもうピークは過ぎたね。」とシビアに言い放った。
「ええ!そうですか!?」
「今から2,3年前はもっとカッコよかったよ。 なにせ隣のデパートにファン倶楽部があったほどだからねぇ。」
「え!( ̄□ ̄;)マジっすか!」
あながち嘘とは思えないほど、(実際事実だったらしい) 「ピークは過ぎた」とはいえ、根本さんはカッコよかった。
ある日、売り場で問題発生。 至急根本チーフの指示をあおがねばならない事態に。 だが彼はどこにもいない! あちこち内線電話で探したが 社員食堂にも事務所にも倉庫にもいない。 店内放送で呼び出してみても、なしの礫である。
「どこ行ったんだ根本ーー!」
みんなが途方に暮れた、まさにその時 向こうから根本チーフが大慌てで走ってくるのが見えた。
「根本さん!どこ行ってたんですかっ!」
非難轟々、殺気立つ我々に彼はこう言い放った
ゴ、ゴメン!う〇こしてたんだよぅ!
Σ( ̄▽ ̄)Σ( ̄▽ ̄)Σ( ̄▽ ̄)
・・・憎めない。
ある日の残業中。 残業は長引き、みんな腹が減って士気が下がっていた。 この日、何故か根本チーフは飴を一袋隠し持っており みんなでコッソリなめよう!と言うことになった。 口をなるべく動かさなければ大丈夫。 彼はみんなに一粒づつ飴を配ってくれた。
「こっそりなめろよ♪」
そして皆で飴をなめながら残業を続けていたが ある社員が「もご」っと頬を動かした所を 運悪く係長に見つかり
「何食ってんだー!」と怒鳴られた。
何も、営業中になめてた訳じゃなし。 残業中に飴の一粒や二粒なめたからって そんなに青筋立てて怒らなくてもいいじゃないか!
だがこの時の係長は、融通の利かないやつだったので 全員一列に並ばされ、大説教を喰らったのであった。
「お前ら!仕事中に飴をなめるとはどういうことだ! 今飴をなめてるヤツは、手を上げてみろ!」
ばらばらっと挙手する女子社員たち。 その中に混じって、うなだれて手を上げる根本チーフ。
「根本、オマエまで何やってるんだ!」怒りまくる係長。
すいません、それ、俺の飴なんです |д・)ビクビク
な、なんだと!?
口ごもる係長。・・・憎めない。
色々と楽しい思い出が多い根本チーフ。 最後に逢ったのはもう10年以上前になるだろうか。 駅のそばで偶然ばったりと再会した。
「あれ!根本さん!?」
「おお!ムッキーじゃないか!久しぶり。 なんだよオマエ、ちょっと太ったんじゃないか〜!?」
人の肥満を見て嬉しそうにムフフと笑う根本チーフ。
「何言ってんですか、人のこと言えるんですか?」
そう・・・。昔あれだけカッコよくて 「ミスター〇〇百貨店」の名を欲しいままにした根本チーフは 人のことは言えないほど中年太りあそばしていた。
くりくりっと目が大きい、可愛かったベイビーフェイスも今は昔。 見事な中年のオッサンになっていたのであった。
「あれっやっぱりそう思う?やだよな〜お互い年取るのは。」
「お互いって言わないでくださいよ。」
そういって笑いあった笑顔の中に 昔のままの根本チーフが見え隠れしていた。
◆◇039◇◆
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ムッキー
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