ムッキーの初老日記
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私の友人で、東京は白金に住む医者夫人という 人も羨む境遇の子が一人いる。 こういう人種はお高くとまったヤツが多いが、なんと彼女は性格もいい。 ご主人は彼女が大好き。浮気や不倫とは無縁の仲睦まじさ。 来春には第一子誕生予定と、女の幸せと言われる物を すべて手に入れた感のある彼女なのだが・・・・。
この彼女が私にポツンと言う。
「結婚してからクラス会に呼ばれない」と。
クラス会に呼ばれない?そんなことってあるの?と思ったが、本当にあるらしい。 彼女は高校まで、地味で目立たない少女だったという。 勉強もそこそこで、男の子にモテたこともなかったそうだ。 だからクラスの目立つ女の子達に敵意も持たれず 彼女達の優越感を満たしてくれる存在として 「ここにいても、よくってよ」という扱いだったそうだ。
それがどうだ。
高校を卒業してから、彼女は花が開いたように可愛い娘さんに変貌してゆく。 学校の勉強は出来なかったかも知れないが もともと思慮深く、頭のいい彼女の目は理知的で美しい。
クラス会のたび綺麗になってゆく彼女を、目立つグループの女の子達が どういう目で見ていたか、私にも容易に想像がつく。
だがまだ彼女達には「結婚」という自慢できる物があった。 (結婚がどうして自慢なのかイマイチ理解に苦しむが。) クラスで一番に結婚したとか、ダンナがエリートだとか、 金持ちだとか、家を建ててもらっただとか、どうとかこうとか。
ありったけの宝石をつけて着飾ったクラスメイト達は自慢しあったらしい。
「貴女はどうなの?結婚はしないの?」
そんなセリフを吐くそいつの顔は、きっとイヤらしい顔だったろう。
だが、またしても大逆転劇は起こった。 30まで仕事を続けた彼女が、結婚した。 相手は東京に住むお医者様。しかも次男坊だ。 結婚に「いい条件」なんて物があるとすれば それの全部に当てはまる結婚だ。
そして、それっきり、彼女にはクラス会の通知が来なくなった。
仲良くしていたクラスメイトに聞いてみると、彼女にだけ通知を出さないよう 目立つグループだった子たちが、裏で手を回しているらしい。
「うへえー!イヤらしいー!やな奴らだな!」
だいたい、クラス会が自慢大会になるのはなんでだ? 人よりちょっといい服を着て高い指輪やバッグを持って ダンナがエリートなのがなんでそんなに自慢なんだ? 他人が何を所有しようが、あなたの人生に何の関係が?
例えば私の友人の彼女。確かに羨ましいかもしれない。 だけど、それは彼女の幸せで、私の幸せとは違う。 もし私が彼女の旦那さんと結婚したら幸せになれるか?
絶対なれない。 私は、私が選んだ今の結婚でしか幸せになれない。
傍目から見て、私と彼女の境遇が天と地ほど違うのは確かだ。 でも彼女になりたいとは思わない。 彼女は彼女。私は私。だからこうして友達でいられるんだ。
人に自慢するために結婚したのか。条件だけで夫を選んだのか。 見せびらかすためにそのバッグを買ったのか?
いやらしいのう。
「そんなクラス会行かなくて正解だよ。行っても嫌な思いするだけじゃん」
そう慰めると彼女は、ちょっと淋しそうに笑った。
◇◆オッサン君の独り言◇◆
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ムッキー
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