ムッキーの初老日記
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中学3年の時「エスパー君」と呼ばれていたクラスメイトがいた。
地理の教科書に載っていたエスキモーの写真にそっくりだったため付いたらしい。
エスキモーに似ていてパ〜だから、エスパー君。
中学生の付けるあだ名って・・・・。
エスパー君は、男子に「おい!エスプァーーー!」と呼ばれても
「なんだよぅ」と返事をして、いつもニコニコしていた。
パシリさせられても「ああ、いいよ」と言って笑っていた。
勉強が出来なくて馬鹿呼ばわりされても「あははは」と笑っていた。
なのにとても優しくて、遠足の時に「ゆで栗」をいっぱい持って来て
みんなに「食えよ」と配っていた。美味しかった。
それでも「エスパー君って気持ちわるーい」と、女子にまで笑われていたが
本気でエスパー君を嫌ってる人は、いなかったんじゃないかと思う。
エスパー君は、後ろだと先生の話を聞いてないという理由で
いつも強制的に前の方の席に座らされていた。
私は近眼で黒板の文字が見えないため、いつも前の席だったので
何度も隣同士になったし、1年間ずっと同じ班だった。
エスパー君はホントに勉強は出来なくて
「おいムッキー、宿題やって来たか?見してくれよぅ」
「次当てられちまうよ、答え教えろよぅ」
と言われ、いつもノートを見せていた。
そのかわり、私の頼みごともみんな聞いてくれた。
卒業式が近づいたある日。エスパー君が言った。
「ムッキーにはずっと世話になったなあ。いつも宿題見せてもらって助かったよ。
高校行っても元気でやれよな。」
私は鼻の奥がツンとして、ふいに涙がこぼれそうになった。
エスパー君とももうすぐお別れだと思ったら、ものすごく悲しくなった。
慌てて「そうだねー!もう見せなくていいと思うとせいせいするよ!」
と憎まれ口をたたいてごまかした。
エスパー君は「ははは」といつものように笑った。
エスパー君は、確かに勉強は出来なかったけど、馬鹿じゃなかった。
給食の時いつも面白いことを言ってみんなを笑わせていた。
いつも楽しそうに笑っていた。
おおらかでゆったりして、優しい子だった。
先日、ホームセンターでエスパー君にそっくりな人を見かけた。
すごく似ていたけど、20年以上会ってないので確信はない。
迷ったが声はかけなかった。
あれはエスパー君だったのかも知れないし、違うかも知れない。
でもあれがエスパー君なら良かったと思う。もし彼だとしたら
37にしては全然オッサンじゃなかった。自由だった。
それで、忘れていたエスパー君のことを思い出した。
中学からの幼馴染にこの話をして、エスパー君の思い出話をしながら
「私さ、エスパー君のこと好きだったよ」と言ったら
「え!」と絶句されてしまったので
「違う違う!そういう『好き』じゃないよ!?」と慌てて否定した。
そういう気持ちじゃないけど、大好きな友達だった。
エスパー君はどんな大人になっただろうか。
昔のままの、おおらかで優しいひとならいいなと思う。
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