2006年05月07日(日) |
この瞬間を忘れぬために |
今の仕事を選んでよかったと思う瞬間がある。
最後の、お客さんからの「ありがとう」と多くの拍手。
まだまだ未熟な私に、ひとりの客が最後に私の手を握ってこう言った。
「あなた、ベテランの人よりずっと良かったよ。一日ありがとう。また会えるといいね。ありがとう」
ギタリストになりたかった私。 添乗員として働く現在の私。
精神的にも身体的にも疲れる仕事のはずなのに、やめたいと思わない。
バスの中で、最後の挨拶をしているときに、私の話を涙ぐんで聞いてくれている人もいる。「またアナタと一緒したい」と言ってくれる人もいる。だけど中には新人というだけで私を非難する人もいる。「やっぱり新人だから便りないな」って言う人もいる。
だけど、最後のあの拍手とバスの中でお客さんが叫んでくれる「ありがとう!楽しかったよ」の言葉が嬉しくて、その言葉が聞きたくて私はまた沢山の人と旅に出ている気がする。
いくら新人といえど、制服を着てお客さんの前に立っている限りプロであり、つらいときでも笑顔を絶やしてはいけない仕事。 すべての総責任者として、自分に全く非がないことでも何かあればすべて自分のせいにされてしまう仕事。
現実と理想のギャップなんかいくらでも出てくる。
今日の添乗に、母と父が客として参加していた。 帰りのバスの中で母からきたメール。
「一生懸命な姿に涙が出ました」
はじめて、自分が一生懸命なことに気がついた。 今まで、一度も一生懸命になったことのない自分が、一生懸命頑張っていることに気がついた。
人を楽しませるプロデュースをする仕事がこんなに大変だなんて思わなかった。だから、全力で走って走って、早く一人前になれるように頑張っていた。
先輩の言葉。
「最初からなんでもできる人なんか絶対いないから、はじめから完璧になんてしなくていいから、私たちもみんなみたいに最初は四苦八苦しながら、一歩一歩歩いてきたんだよ。だから、みんなも一歩ずつ歩いていけばいいんだよ。ゆっくりでいいよ。」
全力で走らないといけないと思っていた。バイトのときとは違う責任の重さ。何もできない私にできることはなんだろう。
だけど、違うんだよな。ひとつずつ、出来るようになればいいんだ。
私は恵まれている。 周囲の人や、仕事や、環境に恵まれている。
道につまづけば、助けてくれる友達がいる。 いつも側にいてくれる、胸を張って「大切な人」だと言える人がいる。 私の一生懸命な姿を見ただけで涙を流してくれる家族がいる。
それを改めて感じさせてくれたのが沢山のひとからの沢山の拍手。
また、大切なものが増えた。
あの瞬間をずっと感じていたいから、あの瞬間を忘れないために。
今日のお題は『仕事』でございました(笑)
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