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2002年10月29日(火)   君の夢はもう見ない/五條瑛


'99年から不定期に雑誌掲載されたいた連作短編、中文研シリーズの単行本化。待ちに待ちましたよ。
もと"会社"のスパイで、現在は中華文化思想研究所の所長を務める仲上。彼のもとに来る数々の手紙には、かつての相棒ラウル・ホウが再び動き出したことが記されていた。
過去にラウルと袂を分かった原因は何なのか。仲上は再びあの世界へ戻ってしまうのか。
この著者、五條氏は雑誌掲載時よりかなり加筆されて単行本化する方なのですが、今回もかなり加筆されていますね。1つ1つバラバラだったトラブルが、ラウル・ホウというキィワードできれいにつながっています。
でも、そのトラブルがどうのっていうよりもむしろ、仲上さんとラウルの関係が気になる。"ふたりで一人前"なんて言うほどのコンビを組んでいた頃のお話も読んでみたいですね。
8つの短編が収録されているのですが、一番好きなのは"薔薇の行方"かな。京劇俳優さんの手の描写がとってもきれいで艶かしくすてきです。
で、にやり、としてしまったポイントは、鉱物シリーズでは情けない葉山がちょっとだけ出てて、しかもラリーさん視点では優秀そう(失礼な)に書かれてること。



懐かしくないと言えば嘘になる。
お前に惹かれていたんだ。おそらく、お前が俺に惹かれていたのと同じほどに。(略)
だが、いまとなってはあれは夢だ。ただの、夢。(略)
俺は戻らない。お前の夢も見ない。もう二度と――。


五條瑛:君の夢はもう見ない,p.329,集英社.






ゆそか