A Will
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薄情かもしれないけれど。 8年。
8年1度も顔を見なければ、思い出せなくもなる。 8年1度も声を聞かなければ、思い出せなくもなる。
けど。思い出せるものもあるの。ちゃんと。 忘れもしないわって、自信があるの。
写真は捨てちゃったの。嫌いだから。 誰にも言ってないエピソードだってあるの。わたしだけのものなの。 捨てられないものは缶に詰めて大人しく部屋に居てもらうの。
時々、過去一色の部屋になるときもあるけど。
「桃の花のほうが好き」 たった、その一言で桃の花が好きになった。
伸びた前髪を気にする仕草がたまらなく好きだった。
時々、悲しそうな顔をするのが気になって目が離せなかった。
抱き合って眠って、起きたときに傍にいる幸福感で、 もしかしたら人は死ねるのかもしれないと思ったりもした。
幸福死。
あの人の傍なら、そんなこともあり得る。言い切るの。
不思議。
時々、不思議。
なんで、いないのか判断がつかなくなる。 目を閉じて、開けて。
そうしたら、目の前にいるんじゃないかなって。
期待。
裏切られ続けた期待。
もう、悲しくはないけれど。 笑うことも出来るけれど。
けど、飽きずに期待しちゃう。目の前にいるんじゃないかって。 当たり前にいないことを、少しも疑わずに。
不思議。
確かにこの目で、死んでしまったあの人を見た。 目を閉じていた。
長くも短くもない睫。 初めてまじまじと眺めた。
死んでいる、と実感。
なにも感じなかった。ただ、あぁ死んでいると。それだけで。
未だに掴みきれてない。のかもしれない。
なんで死んじゃったら会えないの?
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